また、お客様からのお支払い方法も、手形でのお支払いは廃止し、銀行振込や口座引落に限定しましたので、エージェントさんがアスクルにお支払いいただく時点では、すでにお客様からエージェントさんに入金されており、エージェントさんに余剰資金がなくてもアスクルに支払いができます。

 ヒントにしたのは、あるメーカーさんが、小売店から10日に1回、回収をしていたことです。さすがに10日に1回ではエージェントさんの負担が大きすぎるので、無理がなく道理の通った期間ということで、30日に設定しました。

 それでも、エージェントさんとしてはできるだけ支払いを先送りにしたいので、反発もされました。昔から付き合いのある文具店さんのなかには、「やっていられない」といって、エージェントになることなく離れていくところもありました。フィールドカウンセラー(営業のような職種)はかなり苦労したようです。

 しかし、物流センターを新設・増強できれば、アスクルがさらに大きく成長し、エージェントさんやメーカーさんにも利益をもたらすことができます。難航は覚悟のうえで、エージェントさんを粘り強く説得しました。

 このように、「サイト勝ちをする仕組み」をつくったことが、アスクルを急成長させる力になりました。成長すればするほど手元の資金が増えていったので、外部から資金調達をしなくても、物流センターをどんどん増やすことができたのです。

VCからの資金調達を考えるのは
あくまでも最終手段

 1997年に埼玉県に開設した所沢物流センターを、1999年に辰巳(東京都江東区)の東京センターに移転。同年、大阪センターを開設。2000年には仙台センターと福岡センターを開設と、一気に全国各地で物流センターを整備しました。

 今振り返ると、このハイペースで物流センターを開設しなければ、アスクルはここまで成長していなかったのではないかと思います。

 また、物流センターを増強し、キャッシュを潤沢に持つことで、品揃えもどんどん拡充できました。

 売れるかどうかわからない新商品を仕入れたり、売れ筋ではないけれどもたまに売れる商品の在庫を持ったりすることは、キャッシュと物流センターに余裕がなければできません。

 お客様にとって魅力的な品揃えができることで売上がさらに増え、さらに物流センターや品揃えの拡大に投資できるという好循環をつくりだすことができました。

 上場する際の主幹事証券会社からも、この「サイト勝ちする仕組み」は「成長するほどキャッシュが生まれる」と高く評価されました。

 VCから資金を調達するのは、調達しなくても済む手を考えてからでもいいのではないかというのが、私の体験から来る実感です。それがうまくいけば、経営の自由度を下げることなく、事業を大きく成長させることができるでしょう。

 やるだけのことをやってみて、それでもまだ資金が足りないということなら、VCから出資を受けることを目指してもいいかもしれません。VCのおかげで急成長できたスタートアップがたくさんあるのも事実です。

 ただ、VCに向いているビジネスとそうでないビジネスがあることは知っておいたほうがいいと思います。