中国の習近平国家主席(右)と米国のドナルド・トランプ大統領 Photo:ABACA PRESS/時事通信フォト
経済実利をめぐる米中の攻防
5月半ば、トランプ米大統領が国賓として訪中し、習近平国家主席との本年第一回の米中首脳会談が北京で開かれた。元々は3月末から4月初めにかけて開催されるはずだったが、米国およびイスラエルとイランとの戦争により延期されていた。5月半ばにおいて米国とイランとの交渉が継続中であり、ホルムズ海峡が基本的に封鎖されたままだったことは、今回の米中首脳会談にも一定の影響を及ぼしたと見るべきだろう。
米国側が主には直面する課題の解決や実利を追求したのに対し、ホストであった中国側は世界の指導国家としての自己アイデンティティーを主張することに重きを置いて首脳交流を演出した感がある。果たして、両国ともに満足できる結果となったのだろうか。
トランプ氏が2月末に始めたイラン攻撃は、狙いだった核開発の中止や体制転換をもたらさず、かえって海峡封鎖による石油危機を招く結果となった。同氏は他国に与える大迷惑をかえりみず「米国はホルムズ海峡を通る石油を一滴も輸入していない」「自分たちは困らない」と言い張る。
だが、油価の高騰はもちろん米国の国民生活に悪影響を及ぼしている。物価、なかでもガソリン価格の上昇は、トランプ氏の支持率低下に直結しているように思われる。
そうした状況下で、卓越したディールメーカーを自任するトランプ氏が訪中で実現を図ったのは、選挙民にアピールする短期的な実利を得ることだった。
ホワイトハウスの発表によれば、両首脳は二国間の貿易と投資を管理し議論する貿易委員会と投資委員会の設置で合意した。また、中国はレアアースやその他の重要鉱物、及びレアアース精製の設備、技術の輸出規制に関する米国の懸念に対応する。さらに、中国はボーイング社の航空機を200機、そして昨年10月に約束した大豆に加え、米国の農産品を今年から2028年まで毎年170億ドル分買うことや、米国産牛肉の輸入制限の解除に向けた措置を取ることなどを約束したという。
他方、中国商務部のスポークスマンによれば、首脳会談の前日に韓国で中米の代表団による折衝が行われ、貿易委員会の討論を通して双方が同レベルの関税引き下げを行っていくことで原則合意した。また、米国側は、乳製品や水産物など農産品の対米輸出に関し、中国側が長年懸念している問題の解決を積極的に推進していくことに同意した。
1990年代のクリントン政権以来、米中の貿易交渉は基本的に中国側が米国産品を大量に買い付けることで決着してきた。今回は、中国がボーイング機を500機以上購入するという話が事前に出ていたが、それよりはるかに少ない機数だったため、同社の株価が急落する一幕もあった。
今後の貿易や投資をめぐる具体的な交渉は新設される二つの委員会での議論に委ねられる。トランプ氏にすれば、今回の首脳会談をはずみとして、9月24日に予定される習近平訪米時に合わせて大きなディールができるよう、厳しい交渉を進めていくつもりであろう。それが、11月の中間選挙に向けたアピールとなることを期待しているに違いない。







