写真:中国通信/時事通信フォト
トランプ氏とのツーショット写真の意味
習氏の側にしても、国内の景気が浮揚せず、成長のためには輸出に頼らざるを得ない状況下で、イラン戦争、そして、米国との関税や輸出規制問題の解決は重要な課題だ。しかし、具体的な懸案事項に取り組むのと同時に、習氏は今回のトランプ訪中を長期的、戦略的視点から位置付けていたように思われる。
一つは、台湾問題をめぐり、少しずつでも米国の関与の手をほどき、太平洋の向こう側に押しやることだ。この点では、上述したように予想以上の成果を上げることができたと言えるだろう。
そしてもう一つの長期的、戦略的な狙いは、トランプ氏という、米国の国益を損なうオウンゴールを連発してくれる大統領がいる間に、米国と同格の存在として中国を位置付け、その位置取りを国の内外に印象付けることだったように思われる。
その狙いを表していたのが、習氏が繰り返し語った、今回のトランプ訪中が「歴史的、そして象徴的な訪問」だとする表現ではなかったか。どういう意味で歴史的であり、何を象徴する訪問だというのだろうか。その答えは、習氏が自分の住居とする中南海の一角にトランプ氏を案内した際、ツーショットで撮影した記念写真に表れていた。
日本版ニューヨーク・タイムズの一面にも大きく掲載されたその写真は、会見場所となったと思われる建物を背景としており、その入り口の上には「春耦斎」と書かれた大きな額が掛かっていた。「春耦」とは、春に似た者二人が並んで鋤(すき)を取り耕す、という意味だ。偶然ではあるが、図らずも、超大国の指導者と対等な存在となった自分を習氏がアピールするには絶好のロケーションだったのだ。
写真:中国通信/時事通信フォト
今回中国は、「建設的な戦略的安定関係」という新しい表現を準備して、米中の二国間関係を言い表し、米国側もそれを受け入れた。だが実際は、双方とも戦略的競争が長期的に続くことは先刻承知であり、それに勝利するための短期的な発展の利益をお互いに得ようと思っているに過ぎない。
今年は、あと3回首脳会談が開かれる可能性がある。米国の失策に乗じ、国際社会の主導権確保を狙う中国がじわじわと土俵中央に寄り進む、それが現在の米中関係の構図だと言えるだろう。
(伊藤忠総研研究顧問 高原明生)







