どうすればお金をかけずに、売上や利益をもっと増やせるのか? この切実なお悩みに答えるのが、人気の販促コンサルタント・岡本達彦氏の最新刊客単価アップ大事典「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』(ダイヤモンド社刊)です。同書は、「行動経済学×現場目線」で「つい買いたくなる」販促の仕掛けとは何かを言語化した初の書。本書が提示するのは、「お客様の購買行動そのものを変える設計とは?」です。どうすれば、「利益が残る経営」へと変われるのか? 本連載では、『客単価アップ大事典』に収録しきれなかった事例の中から、現場ですぐに導入でき、成果につながりやすい客単価アップの仕掛けを厳選してご紹介していきます

なぜ高級フレンチレストランでは、ウエイターが「本日のおすすめ」を暗記して説明するのか?Photo: Adobe Stock

「読むメニュー」と「聞くメニュー」で
価値が変わる理由

 紙に印刷されたメニューを読むのと、ウエイターが目を見て情熱的に語るのとでは、同じ情報でも受け取り方が根本的に異なります。

「今朝届いたばかりの生うにを使った…」と澄んだ声で語られると、思わず「それにします」と答えてしまうのは、心理学的に明確な理由があります。

「人」が語ることで信頼と権威が生まれる

 同じ情報でも、「誰が伝えるか」によって説得力は大きく変わります。これを心理学で「情報源の信憑性効果」と呼びます。

 訓練を受けたプロが「暗記している」という事実は、「この料理を熟知している」という権威性のシグナルになり、紙の文字よりも圧倒的に高い信頼性を持たせるのです。

物語が価格への抵抗を溶かす

「シェフが先週、産地に足を運んで選んできた素材です」という言葉には物語性があります。

 人が物語に引き込まれると、損得勘定などの批判的思考が低下する現象を「ナラティブ・トランスポーテーション(物語没入)」と呼びます。

 物語に没入したお客様は、「この体験に参加したい」という感情的な動機で注文を決めるため、高単価メニューへの誘導が容易になるのです。

他のお店でも使える「人的物語の注入」設計

精肉店
 POPではなくスタッフが「岩手の牧場主が30年かけて開発した品種で……」と直接語ることで、商品への関与度を劇的に上げる

・ワインショップ
 セルフ説明ではなく「去年、私自身が現地で飲んで感動して仕入れた一本です」という個人的な物語を添える

・花屋
「農家さんが早朝4時から管理して育てたバラです」という一言で、価値を何倍にも高める

まとめ

 ウエイターがおすすめを口頭で説明するのは、

「情報源効果」により、詳しい人の言葉を価格正当化の根拠にする
・「ナラティブ・トランスポーテーション」により、物語への没入で批判的評価を停止させる
・丁寧に説明してくれた相手を無下にしにくいという社会的心理(返報性)を活用する

 という、スタッフが商品の「背景」を語ることで、印刷物には出せない価値を付加する販促戦略なのです。

岡本達彦(おかもと・たつひこ)
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティングや心理学を使わず、
アンケートやマンダラ等を活用して、誰でも売れる広告を作れる手法を体系化する。
業界を問わず即効性が高く、お金をかけずに売上を上げられることから、全国の商工会議所・経済団体などからセミナー依頼が殺到する。
初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル』
『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』『「マンダラ広告作成法」で売れるコピー・広告が1時間でつくれる!』(以上、ダイヤモンド社)等がある。