学校の授業で学ぶ歴史には、偉人たちの輝かしい功績や「すごい」エピソードが数多く登場します。しかし、どんな人物にもそれだけでは語れない一面があります。歴史をひもとくと、「すごい」人の中にも、思わず目を疑うような「やばい」行動や選択が、数多く記録されているのです。
そんな「すごい」と「やばい」の両面から、日本史の人物のリアルな姿に迫るのが『東大教授がおしえる 超!やばい日本史』。同書より特別に一部を紹介します。取り上げるのは、江戸の出版文化を大きく発展させ、多くの人気作家や浮世絵師を世に送り出した蔦屋重三郎です。

【江戸の天才】ベストセラー連発の「カリスマ編集者」の執念がやばすぎるPhoto: Adobe Stock

江戸の出版文化をプロデュースしたカリスマ編集者

 蔦屋重三郎は、大ヒット本を多数世に送り出した、江戸時代のカリスマ編集者です。重三郎は幼いころに両親が離婚して養子に出された町人で、遊女屋が集まる歓楽街・吉原で育ちました。

 かれは手ごろな値段で本を借りられる小さな貸し本屋からビジネスを始め、そこから出版事業を展開。大スター戯作者(=作家)の山東京伝恋川春町、天才浮世絵師(=イラストレーター)の喜多川歌麿東洲斎写楽と組んでヒットを連発しました。

 重三郎はとにかく「おもしれえもの」至上主義。歓楽街での笑いや色気、人間ドラマなど、当時の人々をワクワクさせるエンタメ作品を次々に生み出しました。

 しかし、幕府のナンバー2である老中にガチガチの表現規制派・松平定信が就任し、自由な表現をとりしまる「寛政の改革」が始まってしまいます。ところが重三郎は定信をネタにした「おもしれえ本」を次々と出版! 人気すぎて製本が間に合わず、印刷したてでまだ乾いていない紙に製本用の糸をそえて売っていたといいます。

 当然、重三郎の本は幕府に目をつけられ、何度も出版禁止にされ、財産を半分没収されたりもしましたが、江戸の出版文化そのものを死ぬまでプロデュースしつづけたのです。

【江戸の天才】ベストセラー連発の「カリスマ編集者」の執念がやばすぎるイラスト:和田ラヂヲ(『東大教授がおしえる 超!やばい日本史』より)

(本原稿は『東大教授がおしえる 超!やばい日本史』からの抜粋です)