「“言語化”疲れで、“言語化”という言葉にモヤモヤする」
「即答するよりじっくり考えるほうが大事なのでは?」
「別に“口下手”のままでもいいじゃないか!」…

など、まったく新しいコミュ力を説いた書籍『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』が発売された。著者でイラストレーターのヤギワタル氏は、これまで200冊以上の書籍でイラストや装画を担当してきて、今回が初の単著となる。本書では、昨今の「言語化ブーム」に対して警鐘を鳴らし、「言語化“以外”に目を向けること」をイラストレーターならではの視点で面白く解説している。本記事では、その中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「婚活、推し活、終活…」。“~活”という言葉にモヤモヤが止まらない理由とは?

「婚活、推し活、終活…」にモヤモヤ

 最近、「◯◯活」という言葉をよく見かけます。

 婚活。推し活。終活。朝活。妊活…。これらは便利な言葉です。

 ですが一方で、「なんとなくモヤモヤする」と感じる人も少なくありません。

言語化だけじゃ伝わんない』という本では、その理由について、「言葉には“どこまで含むか”が曖昧なまま使われる性質があるからだ」と語られています。

言葉には、「どこから問題」がある

 本書では、まずこんな説明がされています。

言葉は似たようなものをぐるっと囲んでラベルを貼ったもの。
この、ぐるっと囲んでできる境界線の認識は、人によって異なります。
ある人は「冷凍食品をお皿に盛ること」を料理と言うけど、ある人は言わない。
これを『どこから問題』と呼びます。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 これは、とても重要な視点です。
 人は、言葉を「明確なもの」だと思っています。

 ですが実際には、「どこまで含むか」はかなり曖昧です

「料理」もそう。
「努力」もそう。
「浮気」もそう。

 そして、「婚活」という言葉も同じなのです。

「婚活」の範囲は、人によって違う

 本書では、辻村深月の『傲慢と善良』の一場面が紹介されています。

辻村深月の小説『傲慢と善良』にも、この『どこから問題』が扱われています。
この小説は、主人公の男性が、失踪した婚約者の行方を探すところから始まります。
彼女の行き先を調べていく過程で、婚約者の姉に会って話を聞く場面があります。
そこで主人公は、婚約者が自分と会う前にも『婚活』をしていたか、姉に尋ねます。
すると姉は、逆に質問をしてきます。
『婚活って、どこからを指す?』
『彼氏が欲しいって思って合コンしてた程度のことも含まれる?』
など、婚活という言葉がひとまとめにしている範囲を確認しているのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 これは、かなりリアルです。

 たしかに、マッチングアプリは婚活? 合コンは? 友達の紹介は? 「いい人いないかな」と言っているだけでも婚活?

 それらは人によって認識が違います

 つまり、「婚活」という言葉を使った瞬間、お互いに違うイメージを持っている可能性があるのです。

人は「同じ言葉」ですれ違っている

 本書では、最後にこう語られています。

「どこからが婚活?」という質問をされた主人公は、「婚活」という言葉がひとまとめにしている範囲について、自分の認識が曖昧だったことに気づきます。
主人公が感じているように、『どこから』の境界線は、明確には引けないものです。
線引きのための確実な根拠がないからです。
でも一方で、『絶対にそれは含まれる』と思うようなこともあります。
婚活で言うなら、自ら望んだお見合いや、結婚相手を探すためのパーティに行くこと。
自分でお見合いを希望したなら、多くの人が『それは婚活だ』と思うはずです。
境界線は曖昧。
でも、絶対に含まれると思うものもある。
このように、言葉には『すれちがい』を生む性質があるのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 ここが、この本の核心です。
 言葉は便利です。
「婚活」と言えば、一瞬でなんとなく意味が共有できる。

 ですが、その便利さの裏側で、人は「どこまでを含むか」を勝手に解釈している
 だから、「そんなつもりじゃなかった」が起きるのです。

「◯◯活」が増えるほど、人は窮屈になる

 最近は、なんでも「◯◯活」と呼ばれる時代です。

 ですが、そのラベルが増えるほど、人は「これは◯◯活に入るのか?」を気にするようになります。

 すると、本来もっと自由だった行動まで、“カテゴリー”に閉じ込められてしまう。

 ただ好きな人を応援しているだけなのに「推し活」。
 なんとなく将来を考えているだけなのに「終活」。

 言葉を貼った瞬間、人はそこに意味や境界線を求めはじめるのです

言語化だけじゃ伝わんない』は、「言葉は便利だが、人を縛る力もある」と教えてくれます。

 だからこそ、私たちはもう少し、「ラベルを貼りすぎないこと」を意識したほうがいいのかもしれません。

 人間関係も、仕事も、生き方も、本当はもっと曖昧で、グラデーションのあるものなのです。

ヤギワタル
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。