「言語化にモヤモヤする」
「即答よりじっくり考えるほうが大事」
「口下手のままでもいいじゃない」…

など、まったく新しいコミュ力を説いた書籍『言語化だけじゃ伝わんない –––– 絵を描くように「考える・伝える」技術』が発売された。著者でイラストレーターのヤギワタル氏は、これまで200冊以上の書籍でイラストや装画を担当してきて、今回が初の単著となる。本書では、昨今の「言語化ブーム」に対して警鐘を鳴らし、「言語化“以外”に目を向けること」をイラストレーターならではの視点で面白く解説している。本記事では、その中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

【なんで?】大人になったら「友達」ができない。その理由・ワースト1

友達ができない理由

「大人になると、友達ができない」

 よく聞く話です。

 職場の人とは毎日会う。
 趣味のコミュニティにも参加している。
 SNSでつながっている人もいる。

 なのに、「友達か?」と聞かれると、なぜか言い切れない

言語化だけじゃ伝わんない』という本では、その理由について、「言葉が人間関係に線を引いてしまうからだ」と語られています。

大人になると、「友達」と呼びづらくなる

 本書では、まずこんな感覚が語られています。

大人になって、友だちとも知り合いとも言いにくい関係が増えてきました。
本当は友だちとすんなり呼びたい。
でも、相手がそう思っているかはわかりませんよね。
人の関係って、こっちで勝手に決めていいんでしたっけ?
「私たちって、友だち、だよね……?」

先輩や後輩、上司や部下、親と子には明確に線引きがあります。
この線は、制度的に「そういうもんだ」と決まっているからです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 これは、かなり共感できます。子どもの頃は、自然に「友達」と呼んでいた。
 ですが大人になると、「相手はそこまで思っていないかも」と急に慎重になる

 つまり、人間関係を「ラベル化」することに、強い緊張感が生まれるのです。

「友達」という言葉の境界線

 本書では、さらにこう続きます。

一方で、知り合いや友だち、恋人という言葉には、明確な線引きがありません。
線を引く人の気持ち次第で変わってくるものです。
誰かを「知り合い」と呼んだら、その人は「友だち」ではなくなってしまう
もし言葉にしなければ、友だちか知り合いかを決める必要もありません。
大人になると「友だちができない」と言われることがあります。
「その理由は言葉にある」というのが私の考えです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 ここが面白いところです。
 つまり、大人は「友達」という言葉を重く考えすぎている

「知り合い」「同僚」「仕事関係」「ママ友」
 こうやって細かくラベルを分けるようになる。

 その結果、本来なら「友達」と呼んでもよかった関係まで、距離を置いた表現へ変わってしまうのです。

言葉が人間関係に線を引く

 本書では、最後にこう語られています。

子どもの頃、学校に「知り合い」はいませんでした。
友だちか先輩か後輩か同級生、先生だけです。
同級生の中で、特に長い時間を過ごしている子を「友だち」と呼んでいたはずです。
そしてその関係はわざわざ確認しなくても、「友だち」と呼んでよかったのです。
大人は、知人や同僚、顧客など、人間関係をあらわす言葉をいくつも持っています。
そして、それらの言葉が「どこからが友だちか」「どこからが知り合いか」を問いかけてくるのです。
言葉は線を引く。
その線引きによって、私たちは、本来「友だち」と呼んでもよかった関係を「知り合い」と呼んでしまうのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 これは、とても鋭い指摘です。
 言葉は便利です。ですが同時に、人間関係を固定してしまう力もある
「知り合い」と呼んだ瞬間、少し距離ができる。
「仕事関係」と言った瞬間、プライベートな関係ではなくなる。

 つまり、大人が友達をつくりにくいのは、「出会いがないから」だけではない。
「ラベルを気にしすぎる」からなのです

「友達かどうか」を決めなくてもいい

言語化だけじゃ伝わんない』では、人間関係を少しラクにしてくれる本です。

 大人になると、「この関係は何なんだろう」と定義したくなる。

 ですが、本来、人間関係はもっと曖昧なものだったはずです

 毎日話す人。なんとなく気が合う人。一緒にいるとラクな人。
 それだけでも、本当は十分なのかもしれません。

「友達かどうか」を厳密に決めようとするから、人間関係は少し窮屈になる
 だからこそ、ときには言葉で線を引きすぎないことも大事なのです。

ヤギワタル
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない –––– 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。