「“言語化”疲れで、“言語化”という言葉にモヤモヤする」
「即答するよりじっくり考えるほうが大事なのでは?」
「別に“口下手”のままでもいいじゃないか!」…

など、まったく新しいコミュ力を説いた書籍『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』が発売された。著者でイラストレーターのヤギワタル氏は、これまで200冊以上の書籍でイラストや装画を担当してきて、今回が初の単著となる。本書では、昨今の「言語化ブーム」に対して警鐘を鳴らし、「言語化“以外”に目を向けること」をイラストレーターならではの視点で面白く解説している。本記事では、その中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

二流の人は「言葉だけをメモする」。じゃあ、一流は?

二流は「言葉だけでメモをする」

「メモを取りましょう」

 仕事でも勉強でも、よく言われることです。

 たしかに、メモは大事です。

 ですが、『言語化だけじゃ伝わんない』という本では、「言葉だけのメモには限界がある」と語られています。

 なぜなら、人は言葉にした瞬間、細部を忘れてしまうからです

人は、一度「わかった」と思うと見なくなる

 本書では、まずこんな話が出てきます。

私たちは日常的に、目に見えるもののほとんどをスルーしています。
たとえば、会社や学校までの道のりにはどんなものがあるでしょうか?
はじめて通るときは、そこにどんなものがあるかを観察したかもしれません。
でも、そこに何があるかを把握したあとは、観察をやめたのではないでしょうか。
「改札がある」と一度認識する。
すると、カードをタッチする場所以外の色や形は、何も気にならなくなるのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 これは、人間の脳の特徴です。

 人は、「改札」とラベルを貼った瞬間、それ以上見なくなる。

 つまり、「理解したつもり」が、観察を止めてしまうのです

 だから、多くの人は、「見たつもり」なのに細部を覚えていない

言葉だけのメモは、驚くほど情報量が少ない

 本書では、さらにこんな話が続きます。

私は、街で見かけたおしゃれな人の服装を言葉でメモして、あとで描こうと思ったことが何度もあります。
でも、そのメモは役に立ちませんでした。
言葉でのメモは、その着こなしを思い出すヒントとしては雑すぎるのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 これは、とてもよくわかります。

「黒いジャケット」
「白いスニーカー」
「ゆるめのパンツ」

 そうメモしたとしても、あとから思い出そうとすると、全然再現できない

 なぜなら、本当に印象をつくっていたのは、サイズ感、素材感、シワ、姿勢、重ね方、空気感……、といった、「言葉にしにくい情報」だったからです。

 つまり、二流の人ほど、「単語」だけで理解しようとする。

 ですが、一流の人は、「イメージ」で記憶しているのです

一流は、「頭の中に絵を描いている」

 本書では、最後にこう語られています。

そこで、みなさんにオススメしたいのが、『頭の中に絵を描くこと』です。
実際にペンを動かすのではなく、想像するのです。
想像することは、私がイラストを描くときの工程のひとつです。
多くの場合、私は与えられた言葉からイメージを膨らませていきます。
『イメージが膨らんだあとに、それを画面に描き出して絵に変えていく』というプロセスです。
この中の『言葉からイメージを膨らませる』の部分をやっていただきたいのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 ここが、この本の面白いところです。多くの人は、「言葉にできれば理解した」と思っています。

 ですが、本当に理解している人は、頭の中で映像化している
 つまり、「改札」という単語ではなく、“あの駅の改札の風景”を持っている。

「おしゃれな服」ではなく、“その人が歩いていた空気感”まで思い出せる。

 だから、観察力が高いのです

本当に大事なのは、「言葉の先」を見ること

言語化だけじゃ伝わんない』は、「言葉の便利さ」と「言葉の危うさ」を同時に教えてくれます。

 言葉は便利です。
 ですが、便利すぎるからこそ、人は「見た気」になってしまう

 だから一流の人は、言葉だけで終わりません。

 頭の中で絵を描く。
 風景を想像する。
 細部をイメージする。

 つまり、「ラベル」ではなく、「実物」を見ようとしているのです

 だから私たちは、もっとイメージする力を鍛えたほうがいいのかもしれません。

 部下の様子。相手の表情。会議の空気。街の景色。それらを単語だけで処理してしまうと、本当に大事なものを見落としてしまう。

 本当に仕事ができる人は、「言葉」を超えて、風景で記憶しているのです。

ヤギワタル
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。