「“言語化”疲れで、“言語化”という言葉にモヤモヤする」
「即答するよりじっくり考えるほうが大事なのでは?」
「別に“口下手”のままでもいいじゃないか!」…

など、まったく新しいコミュ力を説いた書籍『言語化だけじゃ伝わんない –––– 絵を描くように「考える・伝える」技術』が発売された。著者でイラストレーターのヤギワタル氏は、これまで200冊以上の書籍でイラストや装画を担当してきて、今回が初の単著となる。本書では、昨今の「言語化ブーム」に対して警鐘を鳴らし、「言語化“以外”に目を向けること」をイラストレーターならではの視点で面白く解説している。本記事では、その中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

頭のいい人は「絵心がある」。じゃあ、それを鍛える“とっておきの方法”とは?

頭のいい人は「絵心がある」

「頭のいい人って、説明がうまいよな」

 そう感じることがあります。
 ですが、『言語化だけじゃ伝わんない』を読むと、その正体は単なる語彙力ではないことがわかります。

 本当に頭のいい人は、「言葉をイメージに変換する力」を持っているのです。

イラストレーターでも、「何を描けばいいかわからない」

 本書では、まずこんな話が語られています。

「職業はイラストレーターです」と言うと、何でも描けるんだと思われがちです。
「クジラの絵を描いて!」と言えば、サラッと描けるのだろうと。
ハッキリ言います。それはめちゃくちゃ難しい。
いや、もちろん、私は、そんな職業イメージに応えられるようになりたいと心では思っています。
そのために、以前やってみた練習があります。
それが、『絵しりとり』です。
リンゴ、ゴリラ、ラッパ……と、しりとりで出てくる言葉をすべて絵にしていきます。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 言葉を聞いて、即座に「絵」へ変換する。
 つまり、「言葉をイメージとして理解できているか」を試しているのです。

「イメージできない言葉」を大量に使う

 本書では、さらにこう続きます。

ところが、やってみるとすぐに問題が発覚します。
しりとり自体は簡単で、言葉はサクサク出てきます。
でも、「何を描けばその言葉を表現したことになるか」がわからないことがあるのです。
パンダ、ダチョウ、ウサギ……。これらの言葉は、みなさんも何かしら頭の中にイメージが浮かぶのではないでしょうか。
でも、「ウサギ」の次に「技術」という言葉が出てきたらどうでしょうか?
何を描けば「技術」のイラストになるのか。
職人の技術、サッカープレイヤーの技術、ビジネスパーソンの交渉の技術……。
どれを描いても、なんだか不十分な感じがしてしまいます。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 人は、「技術」という言葉を普通に使っています。
 ですが、その実態をイメージしようとすると急に止まる。
 つまり、多くの人は、「イメージできていない言葉」を大量に使っているのです。

 これは仕事でも同じです。
「戦略」「カルチャー」「価値」「成長」…。こういう言葉も、実際には人によって頭の中の絵が違う
 だから、すれ違いが起きるのです。

理解の浅さを暴き出す

 本書では、最後にこう語られています。

絵しりとりが教えてくれるのは、言葉には「パッとイメージが浮かばない言葉」があるということです。
「技術」のほかにも、「無」「自由」「経済」などがあります。
どんなふうに描いたらそれを描いたことになるのか、まったくわかりません。
言葉でのしりとりはサクサク進むのに、絵しりとりは止まりがちになる。
つまり、私たちはパッとイメージできない言葉を普段からたくさん使っているのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 これは、とても怖い話です。
 なぜなら、人は「言葉を知っている」と、「理解している」と勘違いするからです。

 ですが、本当に理解しているなら、絵にできるはずなのです。
 つまり、「絵しりとり」は、知識量ではなく、「理解の深さ」を暴き出すゲームなのです

頭のいい人は、「言葉を映像化している」

言語化だけじゃ伝わんない』は、「頭のよさ」の正体を教えてくれます。

 それは、難しい単語を知っていることではありません。
 言葉を、頭の中で具体的な風景へ変換できること

 だから頭のいい人は、説明が具体的で、イメージしやすく、誤解が少ない。
 つまり、「絵心」があるのです

 そして、その力を鍛える方法が、「絵しりとり」。
 これは単なる遊びではありません。

「自分は、本当にその言葉を理解しているのか?」を確かめる、とても強力なトレーニングなのです。

ヤギワタル
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない –––– 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。