「“言語化”疲れで、“言語化”という言葉にモヤモヤする」
「即答するよりじっくり考えるほうが大事なのでは?」
「別に“口下手”のままでもいいじゃないか!」…
など、まったく新しいコミュ力を説いた書籍『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』が発売された。著者でイラストレーターのヤギワタル氏は、これまで200冊以上の書籍でイラストや装画を担当してきて、今回が初の単著となる。本書では、昨今の「言語化ブーム」に対して警鐘を鳴らし、「言語化“以外”に目を向けること」をイラストレーターならではの視点で面白く解説している。本記事では、その中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「ラクな人」「だるい人」
「この人と話すとラクだな」
「なんかこの人とは会話が噛み合わない」
そう感じることがあります。
しかも不思議なのは、どちらも悪い人ではないことです。
むしろ、真面目で、ちゃんと話している。
なのに、なぜかズレる。
『言語化だけじゃ伝わんない』という本では、その原因について、「言葉の“真ん中”の感覚が共有できているかどうか」だと語られています。
言葉には「真ん中」と「端っこ」がある
本書では、まずこんな説明がされています。
ひとつの言葉に対して、『真ん中』と『端っこ』に分けることができます。
「絶対に含まれる」と思うものは真ん中に、「含まれるかどうか曖昧なもの」は端っこにある。
仲の良い人とストレスなく会話できる秘密は、ここにあります。
会話がスムーズに進むのは、お互いが『真ん中』の意識を共有しているからです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
これは、とても面白い考え方です。
人は、同じ言葉を使っているようで、実は頭の中のイメージが違っています。
ですが、近い関係の人とは、その「真ん中」の感覚が似ている。
だから、「アレ」で通じる。
説明が少なくても伝わる。
つまり、会話のラクさとは、「語彙力」ではなく、「感覚の共有」なのです。
人は、「鳥」と聞いてダチョウを想像しない
本書では、さらにこんな例が紹介されています。
多くの人は、おそらくハトかスズメ、もしくはカラスやムクドリなど、「飛ぶ鳥」を思い浮かべるはずです。
でも、その話に出てくる鳥が実は「ダチョウ」だったとしたら?
「それはダチョウって言ってくれないとわからないよ」とツッコミたくなるでしょう。
「鳥」という言葉がひとまとめにしている真ん中には、身近に飛んでいる鳥がいるはずです。ダチョウやハシビロコウのような飛ばない鳥は端っこです。
ニワトリも飛びませんが、なじみがあるのでもう少し中心近くにいるかもしれません。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
これは、コミュニケーションの本質です。
人は、「鳥」と聞くと、無意識に「真ん中」を想像する。
だから、相手が端っこのイメージを持っていると、会話がズレる。
つまり、「ちゃんと言わなかったから悪い」というより、「お互いの真ん中が違った」のです。
「ラクな人」とは、真ん中の感覚が近い人
本書では、最後にこう語られています。
それは、『相手の言葉がさす真ん中がすぐにわかる』ということでもあります。
距離感が近いと「何が真ん中にあるか」の感覚も共有されているのです。
真ん中の感覚のズレ、端っこの感覚のズレは、時には争いを生む原因にもなります。
どこからが「家事」なのか、「子育て」なのかという日常に関わる問題もあります。
どこからが「国民」なのかという政治的な問題もある。
どこからが「適切」なのかという、正しさをめぐるような問題もあるでしょう。
自分の真ん中の感覚を、会話している相手も同じように持っているとは限りません。
その感覚がずれていたときに、「すれちがい」が起きてしまうということです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
これは、人間関係の本質を突いています。
「ラクな人」とは、単に優しい人ではありません。
言葉の「真ん中」が近い人です。
だから説明が少なくて済む。
誤解が少ない。
空気感が共有できる。
逆に、どれだけ丁寧に話しても、「真ん中」の感覚がズレていると、会話はどこか疲れる。
人間関係は、「感覚の共有」でできている
『言語化だけじゃ伝わんない』は、「コミュニケーションは言葉だけでは成立していない」と教えてくれます。
本当に大事なのは、「同じ単語を知っていること」ではありません。
その言葉の「真ん中」を共有できているか。
つまり、人間関係とは、「辞書的な意味」ではなく、「感覚」でつながっているのです。
だからこそ、人と話していて疲れるときは、「相手が悪い」と決めつける前に、「真ん中の感覚が違うのかもしれない」と考えてみる。
それだけで、人間関係は少しラクになるのかもしれません。
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。








