「“言語化”疲れで、“言語化”という言葉にモヤモヤする」
「即答するよりじっくり考えるほうが大事なのでは?」
「別に“口下手”のままでもいいじゃないか!」…
など、まったく新しいコミュ力を説いた書籍『言語化だけじゃ伝わんない –––– 絵を描くように「考える・伝える」技術』が発売された。著者でイラストレーターのヤギワタル氏は、これまで200冊以上の書籍でイラストや装画を担当してきて、今回が初の単著となる。本書では、昨今の「言語化ブーム」に対して警鐘を鳴らし、「言語化“以外”に目を向けること」をイラストレーターならではの視点で面白く解説している。本記事では、その中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「言葉にできない」を解決する
「うまく言葉にできない……」
仕事でも、人間関係でも、よくある悩みです。
頭の中にはイメージがある。
でも、それを説明しようとすると、急にズレていく。
『言語化だけじゃ伝わんない』という本では、その理由について、「そもそもコミュニケーションは“実物がない状態”から始まっているからだ」と語られています。
そして、この問題を解決するための、とても実践的な方法が紹介されています。
コミュニケーションは「マイナスから始まっている」
本書では、まずこんな話が出てきます。
実物があれば、それを見せるのが一番です。
まずはそれが理想だというところから押さえておきましょう。
でも、実際にはその『実物=コレ』が手元にないときもあるでしょう。
「実物が手元にあれば、伝えやすいのになぁ……困った」
と、残念に思う気持ちが、多くのコミュニケーションのスタート地点です。
実物のない私たちのコミュニケーションは、マイナスからスタートしているのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
これは、とても重要な視点です。
多くの人は、「言葉で正確に説明すれば伝わる」と思っています。
ですが、実際には、実物がない時点で、すでに難しい。
つまり、コミュニケーションとは、本来かなり不完全なものなのです。
言葉だけでは、まったく足りない
本書では、さらにこんなエピソードが語られています。
雲なんて簡単だと、安心しきっていたのですが、何度描いてもオッケーが出ません。
「なぜ、こんなにも雲を描いているんだ……?」と諦めかけていたころ、ついに、「『ドラゴンボール』に出てくる筋斗雲みたいな雲なんですよね」という言葉を引き出すことができ、それでなんとか無事に着地することができました。
「雲」という言葉がひとまとめにしている雲は無数にあります。
入道雲、鰯雲、名前はわからないけど形が風で変わっていろんな動物に見える雲……。
このときの私がやったことは、くじ引きのくじを手当たり次第に引いただけでした。
だから、何度もすれちがいが発生したのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
これは、仕事でも本当によくあります。
「いい感じで」
「スタイリッシュに」
「親しみやすく」
こういう言葉は、一見伝わっているようで、実は範囲が広すぎる。
だから、人によってイメージがズレるのです。
ですが、「筋斗雲みたいな雲」と言われた瞬間、一気に共有される。
つまり、人は「具体的なイメージ」があると、急激に伝わりやすくなるのです。
本当に頭のいい人は
「すれ違い」を早く発見する
本書では、最後にこう語られています。
1 言葉として意味を理解できたとしても、まだそれは理解の半分でしかない
2 言葉がひとまとめにしている範囲が広いと、すれちがう率が高まる
ということです。
「食事の様子を描いてください」と言われれば、何かしら描くことはできます。
そこで和食を描くと、「実は洋食を描いてほしかったんです」と言われる。
そういう経験を通じて、すれちがいの仕組みがわかってきたということです。
このことを考えるために、イラストレーターとして私がやっていることは、「依頼されたその場で落書きを描いてしまうこと」です。
このとき、正解を描く必要はありません。
この落書きは、『すれちがい』に気づくための落書きです。
私と依頼主とで意識のズレがあるとその場でわかれば、依頼主の言葉が変わります。
ズレが生じていることは、落書きによって明らかになって、言葉を言い換えるしかない状況になるのです。
言葉が変わると、くじ引きの当たり確率が格段に上がります。
当たりがわかりやすくなる言葉が出てくるからです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
ここが、この本の核心です。
多くの人は、「正解を出そう」とします。
ですが、本当に頭のいい人は違う。
まず、「ズレを発見しよう」とするのです。
だから、ラフを見せる。図を描く。たとえ話をする。途中で確認する。
つまり、「すれ違いを早く見つける工夫」をしている。
「言葉にできない」は、悪いことではない
『言語化だけじゃ伝わんない』は、「言葉にできない自分」を責めなくていいと教えてくれます。
そもそも、人の頭の中にあるイメージを、そのまま言葉へ変換すること自体が難しい。
だから、本当に大事なのは、「完璧に説明すること」ではない。
ズレに気づくことです。
そして、そのズレを埋めるために、絵を描く。例を出す。実物を見せる。言葉を言い換える。
そうやって、少しずつ「同じ景色」を共有していく。
それこそが、本当のコミュニケーションなのかもしれません。
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない –––– 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。








