スタートアップが成功できるか、失敗して消えてしまうか? それを決めるのは、Product Market Fit(PMF:プロダクト・マーケット・フィット/市場で顧客に愛される製品・サービスを作ること)を達成できるかどうかにかかっている。『増補改訂版 起業の科学 スタートアップサイエンスVer.2』(田所雅之著、ダイヤモンド社)は、起業家の8割が読み、5割が実践する起業本のベストセラー『起業の科学』を9年ぶりに大改訂した最新版。本連載では同書から抜粋して、スタートアップの成長を加速するポイントについて、わかりやすくお伝えしていきます。
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ビッグテック(21世紀の黒船)の動きに注目する
STEEP分析の一環ともいえるが、自分のアイデアを検証するときにGoogle、Amazon、Meta、Apple、Microsoftなどのビッグテックの動きに注目することも重要だ。
これらのプラットフォーマーは2025年だけで合計3,200億ドル以上をAIインフラに投資しており、彼らが何を仕掛けてくるかによって、あらゆる前提条件が変わってくることになるからだ。
近年では5年から10年に1回くらい、とんでもない黒船がシリコンバレーからやって来て、市場のルールを変えてしまうことが続いている。
1995年の黒船はWebブラウザだった。2007年にはiPhoneがやって来た。2010年代後半には音声認識インターフェース(Amazon EchoやGoogle Home)が登場し、日常生活に浸透した。
そして2022年末、ChatGPTに代表される生成AIが市場を席巻し、わずか2年で75%のビジネスリーダーが活用するまでになった。
次の黒船は何か?
では、2025年の次の黒船は何かといえば、「エージェント型AI」だ。
これは自律的にタスクを計画し実行できるAIシステムで、単なるコンテンツ生成を超えて、実際の業務を遂行できるソリューションだ。
Microsoftのデータによれば、既に37%のIT責任者が導入済みと回答し、68%が半年以内に導入予定としている。専用のエージェント開発ツールが続々登場し、エコシステムが急速に形成されている。
スタンフォード大学のAI Index Reportによれば、AI推論コストは2022年11月から2024年10月の間に280倍以上低下した。
もう一つの黒船候補がAIスマートグラスだ。MetaのRay-Ban Metaスマートグラスは200万台以上を販売し、リアルタイム翻訳機能を搭載している。AppleもAirPods Pro 3で同様の機能を追加し、GoogleもPixel 10に音声を保持したまま翻訳する機能を実装した。
かつてのGoogle Glassが早すぎた試みだったのに対し、今やApple、Googleも独自のスマートグラス開発を進めている。
スマートフォンに次ぐインターフェースとして、数年後には当たり前の光景になるかもしれない。
Amazonの動向のチェックは
絶対に欠かせない
流通小売りに関連するスタートアップなら、Amazonの動向は絶対にチェックしておかないといけない。Amazon Goの「Just Walk Out」技術は既に実店舗で稼働しており、レジなし、キャッシュレスで買い物ができる時代は既に到来している。
さらにAmazonは、独自のAIチップ(AZ3、AZ3 Pro)を開発し、新しいEchoデバイスやAWS基盤で活用することで、エッジAI(現場で即座に判断するAI)領域でも優位性を構築している。
技術の民主化が加速する中、ビッグテックの次の一手を見逃さないことが、ビジネスの成否を分ける鍵となるだろう。
(本稿は『増補改訂版 起業の科学 スタートアップサイエンスVer.2』の一部を抜粋・編集したものです)
株式会社ユニコーンファーム 代表取締役CEO
1978年生まれ。大学を卒業後、外資系のコンサルティングファームに入社し、経営戦略コンサルティングなどに従事。独立後は、日本で企業向け研修会社と経営コンサルティング会社、エドテック(教育技術)のスタートアップの3社、米国でECプラットフォームのスタートアップを起業し、シリコンバレーで活動した。
日本に帰国後、米国シリコンバレーのベンチャーキャピタルのベンチャーパートナーを務めた。また、欧州最大級のスタートアップイベントのアジア版、Pioneers Asiaなどで、スライド資料やプレゼンなどを基に世界各地のスタートアップ約1500社の評価を行ってきた。これまで日本とシリコンバレーのスタートアップ数十社の戦略アドバイザーやボードメンバーを務めてきた。
2017年、新たにスタートアップの支援会社ユニコーンファームを設立、代表取締役社長に就任。その経験を生かして作成したスライド集『スタートアップサイエンス2017』は全世界で約5万回シェアという大きな反響を呼んだ。
主な著書に『起業の科学』『入門 起業の科学』(以上、日経BP)、『起業大全』『「起業参謀」の戦略書』(ダイヤモンド社)など。




