ちゃんとやっているのに、なぜか評価されない。そんな違和感を抱いたことはないだろうか。一生懸命に動いているし、言われたこともこなしている。それでも、「本当に仕事ができる人」との差が埋まらない。その原因は、「努力不足」ではないかもしれない。
では、何が重要なのか。『会社から期待されている人の習慣115』の著者であり、815社・17万3000人の働き方を分析してきた越川慎司氏と、『仕事ができる人の頭のなか』の著者であり、累計195万部を突破したベストセラー作家の木暮太一氏による対談に、その答えがあった。それは、難しいスキルでも特別な才能でもない。むしろ、誰でもできるシンプルな一手であった。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)

本当に仕事ができる人は「いきなり努力」をしない。では、何から始める?Photo: Adobe Stock

「本当に仕事ができる人」が行動する前にやること

越川慎司(以下、越川):最新刊『仕事ができる人の頭のなか』の核心を教えてもらえますか。

木暮太一(以下、木暮):仕事とは何かという定義を、きちんと持ってほしいというのが出発点でした。

 私の定義では、仕事とは「相手の負荷を減らすこと」です。

 世の中には仕事術の本がたくさんありますが、何に向かっているのかがわからないまま、とにかく生産性を上げようという本が多い。

 仕事ができる人を見て、あの人は話がうまいから私も話術を磨こう、あの人はスクワットをやっているから私もやろう、という発想になりがちです。

 でもこれは、高校野球で言えば、野球のルールを把握する前に素振りをしているようなものです。まず仕事とは何かというゲームの定義を理解することで、何をすべきかが明確になる。

越川:仕事ができない人は、良かれと思ってやっていることが、実は的外れなことが多い。

 悪意があってやっているわけじゃないけれど、そのズレに気づけていないということですね。

木暮:まさにそうです。当たり前を疑うことが、この本の本質だと思います。

 無駄だと思って仕事している人は誰もいない。でも「相手の負荷を減らす」というシンプルな定義に照らし合わせると、自分がやっていることが本当に相手の役に立っているのかどうかが見えてくる。

 それが見えるようになることで、行動が変わり、成果が変わり、仕事観が変わっていくと思っています。

越川:「言語化」という視点から見ると、仕事のゴールを言語化することで手段が見えてくる、というのがこの本の構造だと思いました。

 ゴールが言語化できれば戦術が言語化でき、アクションが決まる。言語化は、仕事においても出版においても、すべての起点になるということですね。

木暮:そうです。言語化できないものは、動かせません。自分の頭の中がドロドロしたセメントのままでは何も積み上がらない。

 言語化することで初めて、自分の考えがブロックになって、積み重なっていく。それは仕事でも、本を書くことでも、人生の設計においても、まったく同じことだと思います。

本当に仕事ができる人は、まず「ゴール」を言語化する

越川:『会社から期待されている人の習慣115』でも、似たような事実を取り上げました。

 それは優秀な人たちの「会議」における習慣ですが、彼らの多くは会議の冒頭で「ゴール」を明確にし、参加者と共有していたんです。

 期待されている人のなかで、会議を主催している人の73%が、会議開始から最初の1分で議題(アジェンダ)と終了要件を確認していました。
「本日の議題は3つです」
「この会議で決めることは◯◯です」
 冒頭で会議の全体像を共有することで、参加者全員の当事者意識を引き出していたのです。ちなみに一般管理職での実施率は11%のみでした。

――『会社から期待されている人の習慣115』より

 冒頭で終了要件を明示した会議は、そうでない会議に比べて予定よりも早く終わる確率が38%アップすることもわかりました。

 その際、「まだ時間があるから続けよう」は絶対にしません。終了要件がクリアできたら、会議時間が残っていても、その時点で即終了します。

 会議に限らず、ゴールを言語化し、そのために必要なことをできる人が、本当に「仕事ができる」ということなのかもしれませんね。

(本稿は、『会社から期待されている人の習慣115』の著者・越川慎司さんと、『仕事ができる人の頭のなか』の著者・木暮太一さんによる対談をもとにした書き下ろし記事です)

越川慎司(こしかわ・しんじ)
株式会社クロスリバー 代表取締役社長
日系通信会社や外資ベンチャーなどを経て2005年にマイクロソフト米国本社へ入社。その後、日本マイクロソフトの役員としてExcelやPowerPointなどの事業責任者を務める。2017年には週休3日・複業を実践する会社、株式会社クロスリバーを設立し、800社以上の働き方改革を支援。年300回以上提供する企業向けオンライン講座の受講者満足度は平均96%、行動に移す受講者は95%以上。著書は『世界の一流は「休日」に何をしているのか』(クロスメディア・パブリッシング)や、『AI分析でわかった トップ5%社員の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など33冊、累計130万部。NHK、TBS、テレビ東京、PIVOT、NewsPicksやReHacQなどメディア出演多数。

木暮太一(こぐれ・たいち)

言語化コンサルタント・作家・(一社)教育コミュニケーション協会 代表理事

著作累計68冊、累計195万部突破。14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない!」状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。