大事な会議や集中したい作業の前に、なぜか頭がぼんやりする。気合いを入れようとしても、なかなかエンジンがかからない――。そんなとき、役立つのはコーヒーや深呼吸だけではないかもしれない。実は、スクワットや腕立て伏せのような短い筋力トレーニングも効果がある。1万人以上の患者を診てきた医師が、医学的根拠に基づいて執筆した『鍛えるよりも「使い方」 体力がすべて』から、一部を抜粋・編集しそのヒントを紹介する。

【医師が教える】会議前の「集中」を助ける筋トレの取り入れ方Photo: Adobe Stock

筋トレがもたらす意外な効果

 筋力トレーニングは、運動直後に衝動を抑える力や、注意・判断といった実行機能をわずかに改善することが報告されている(*1)。

 日常でも、重要な会議や勉強の前に、スクワットや腕立て伏せを短時間行うだけで、頭が少しクリアになったり、取りかかりやすくなったりすると感じることがある。

 ただし、効果の出方は、強度や量、休息、そして運動から課題に入るまでの間隔によって変わる。

 いま出せる体力を整え、すぐに作業へ戻れる状態をつくるための目安は、追い込みすぎない中くらいの強さだ。つまり「きついが、まだ少し余裕がある」と感じる程度である(*2)。

 強すぎると息切れや疲労が認知面のプラスを上回り、課題の内容やタイミングによっては、その後のパフォーマンスが不安定になることがある。ポイントは、そのバランスが崩れない範囲に負荷をとどめることだ。

 心強いのは、継続的なトレーニング効果を待たなくても、単発の運動で脳の状態がわずかに変わりうる点だ。

 1回の有酸素運動や筋力トレーニングの後に、反応速度や注意の持続、不要な反応を抑える力に、小さいながらも改善が見られたという報告もある(*3)。

 変化は、頭が少し軽くなる程度のことも多い。しかし、この小さな改善を日々積み重ねることが、集中や判断のぶれにくさの底上げにつながる。重要なのは、短い刺激をうまく使うことだ。

注釈
1. Wilke J, Giesche F, Klier K, Vogt L, Herrmann E, Banzer W. Acute effects of resistance exercise on cognitive function in healthy adults: a systematic review with multilevel meta-analysis. Sports Med. 2019 Jun;49(6):905-16.
2. Huang TY, Chen FT, Li RH, Hillman CH, Cline TL, Chu CH, et al. Effects of acute resistance exercise on executive function: a systematic review of the moderating role of intensity and executive function domain. Sports Med Open. 2022 Dec 8;8(1):141.
3. Garrett J, Chak C, Bullock T, Giesbrecht B. A systematic review and Bayesian meta-analysis provide evidence for an effect of acute physical activity on cognition in young adults. Commun Psychol. 2024 Aug 28;2(1):82.

(本稿は『鍛えるよりも「使い方」 体力がすべて』から一部抜粋・編集したものです。)