ちょっとしたことで気分が乱れ、不安に引きずられてしまう人がいる。一方で、どんな状況でも感情を安定させ、淡々と前に進める人もいる。その差を分けているのは何だろう。医師で老年医学・栄養科学の専門家であるガブリエル・ライオン氏が書き、世界20か国以上で続々刊行されている『筋肉が全て━━健康・不老・メンタル、人生のすべてが変わる唯一の方法』からヒントを紹介しよう。(ダイヤモンド社書籍編集局・三浦岳)
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ネガティブな感情を振り払う
どんなトラブルに直面しても動じず、前向きさを保てる人がいる。一方で、同じ状況でも強いストレスを受けてしまう人もいる。その違いは、生まれつきの性格だけで説明できるものではない。日々どのような習慣を持っているかが、少なからず影響している可能性がある。
医師で老年医学・栄養科学の専門家であるライオン氏が著書『筋肉が全て』で強調するのは、精神状態と身体の切り離せない関係だ。気分が沈んだとき、多くの人は頭の中で解決策を探そうとする。しかし著者は、心を整える鍵は身体の使い方にあると説く。
とくに、否定的な感情にとらわれたときは、まず身体を動かすことが有効だという。メンタルが強い人ほど、実はこの単純な習慣を当たり前のように続けている。
本書にはこう記されている。
頭で考えてもそれができない場合は、身体に働きかけよう。
ランニングやバイク・スプリント(固定式自転車を短時間全力で漕ぐ運動)、腕立て伏せ、腹筋運動、あるいはエアスクワットを何回か行うだけで目覚ましい効果がある。
身体を使って心をコントロールするのだ。
運動によって身体を疲労レベルまで追い込めば、それまで自分を振りまわしていた思考はどこかに行ってしまい、自分が思考をコントロールし始めていることに気づくだろう。心が沈んだときは身体を動かそう。――『筋肉が全て』より
運動によって気分に関わる生理的な変化が起こることは、これまでの研究でも示唆されている。思考が堂々巡りを始めたとき、身体を動かすことで意識の焦点が変わるという経験は、多くの人が持っているだろう。
心を直接コントロールしようとするのではなく、身体を先に動かすという発想は、現実的な対処法の一つといえる。
「小さな困難」で心を鍛える
さらに本書では、精神的な強さを養う方法として、日常的に小さな「困難」を自らに課すことにも触れている。安易な選択を避け、あえて少し不便な行動を選ぶという姿勢だ。
ソフィアという人物のエピソードは、その一例として紹介されている。
一定時間スマートフォンを触らない。地下鉄に乗らずに歩く。午後のコーヒーを断つ。
どれもそれほど難しいことではなかったが、易きに流れがちだった心を強化するのに役立った。(中略)
体脂肪が減って筋肉が増え、血糖値も改善したが、彼女がつかんだいちばん重要なものは自分自身に対する信頼だった。
ソフィアはウェイトトレーニングを始め、楽しみのためにマラソンに挑戦し、これまでやったことのないアクティビティにもチャレンジするようになった。――同書より
小さな約束を積み重ねることが、やがて自分への信頼につながっていく。
筋肉を鍛えることそのものが目的なのではない。日々の行動を通じて、「自分はやれる」という感覚を取り戻していく過程こそが重要なのだ。
心と身体は別々に動いているようでいて、実際には密接につながっている。だからこそ、行動を変えることが、心のあり方を少しずつ変えていく。
医師(DO)
イリノイ大学で栄養科学の学部課程を修了後、セントルイス・ワシントン大学において老年医学・栄養科学の臨床・研究フェローシップを修了。健康、パフォーマンス、老化、疾病予防におけるタンパク質の種類および摂取量の実践的応用に関する分野の専門家、教育者として活躍している。筋肉についての最新研究を網羅した本書は全米で大きな話題を呼び、ニューヨーク・タイムズベストセラー、ウォール・ストリート・ジャーナルベストセラー、USAトゥデイベストセラーとなり、世界各国での刊行が続いている。







