サイコパスは医学的病名ではなく、反道徳的で他人を利用しても罪悪感を持たない人の総称です。一見魅力的で話が面白いため、知らぬ間に巻き込まれる危険があります。対策は、一人で冷静に考える時間を確保し、やりたくないことをやらされていないか見つめ直す「自分軸」を持つことです。もし自身にその傾向を疑い「直したい」と悩めるならば、自覚があるためサイコパスではありません。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局・斎藤順)

【精神科医が解説】あなたの隣の「サイコパス」から身を守る方法Photo: Adobe Stock

「サイコパス」と「パーソナリティ障害」の違い

今日は、「あなたの隣のサイコパス」というテーマでお話しします。「サイコパス」という言葉は世間でよく使われていますが、実は医学的な定義のある診断名や病気の名前ではありません。

私たち精神科医が扱う病名の中に、「パーソナリティ障害」というものがあります。これは簡単に言うと、「性格が極端すぎるあまり、本人や周囲が困ってしまい、日常生活に支障が出ている状態」のことです。

何度も確認をしてしまう強迫的な性格の人、不安になりやすい人、落ち込みやすい人、ネガティブに考えやすい人、誰かに依存しやすい人など、世の中にはさまざまな性格の方がいます。しかし、それがあまりにも極端で日常生活がままならないレベルになると、「パーソナリティ障害」と診断されることがあります。

ただし、精神科医は必ずしも本人にこの診断名を伝えるわけではありません。それを伝えることが、必ずしも治療にとってプラスになるとは限らないからです。

たとえば、背景にパーソナリティ障害があったとしても、現在うつ病を発症しているのであれば、まずはうつ病の治療を優先します。その上で、「この方はこういうパーソナリティの傾向があるから、こういった対応をしよう」と、医師の中で念頭に置きながら治療を進めることが多いのです。

他人を利用することに「罪悪感」がない人

このパーソナリティ障害の中には、「他人を利用することを何とも思わない」というタイプがいくつか存在します。他人を利用することへの罪悪感が欠如していたり、社会的なモラルを意に介さなかったりするのです。世間一般で「サイコパス」と呼ばれているのは、病名ではなく、こうした「反道徳的で他人を利用しても平気な、困った特徴を持つ人々」の総称だともいえます。

ここで誤解していただきたくないのは、「パーソナリティ障害で悩んでいる方=サイコパス」ではないということです。サイコパスとは、あくまで「道徳観念がなく、他人を利用することを何とも思わない人の一群」だと大雑把に捉えてください。

要注意!サイコパスは「一見、魅力的」に見える

一番厄介なのは、サイコパスと言われやすいタイプの人たちは、パッと見はすごく魅力的で、話が面白く、一緒にいて楽しいと感じさせる人が多いという点です。

見るからに危なそうで怖い人であれば、私たちは自然と避けます。しかし、彼らは魅力的に近づいてくるため、知らないうちに利用されたり、巻き込まれたりしてしまうパターンが非常に多いのです。

巻き込まれないための「自分軸」と「1人の時間」

こうした人たちに利用されないために最も大切なのは、「自分軸」を持つことです。

「私は今、本当に自分のやりたいことをやっているだろうか?」
「やりたくないことを、この人にやらされていないだろうか?」
「これは本来の自分の考えとは違うのではないか?」

このように、1人になって冷静に考える時間を持つことが非常に重要です。サイコパス的な人は、ターゲットに冷静になられると困るため、何かと理由をつけてあなたが1人で考える時間を奪おうとします。

だからこそ、普段から自分の考えや自分の時間をしっかりと守る意識が必要です。「私はこういう人間です」と意思表示をし、時には頑固さを見せることも大切です。何でも「はいはい」と聞いていては、「いいカモだ」と思われてしまいます。彼らは意図的であれ無意識であれ、「自分の要求に応じてくれそうな人」を見抜こうとしているのです。

もし「自分がサイコパスかも?」と悩んだら

もし、このお話を聞いて「自分も無意識のうちに人を利用しているかもしれない」「どうにかして直したい」と悩まれた方がいたら、安心してください。

本当のサイコパスは、自分に問題があるという自覚がなく、自分を変えようとも思いません。「自覚して変えたい」と思えている時点で、すでにサイコパスの入り口からは抜け出しています。性格をすぐに変えることは簡単ではありませんが、少しずつ改善していくことは可能ですので、気になる場合は精神科で相談するのも一つの方法です。

世の中には、ルールを破ったり他人を利用したりすることを何とも思わない人たちが潜んでいます。そして、そうした人たちは一見、魅力的に見えることがあるという事実を、ぜひ認識しておいてください。この知識を持っておくだけで、人間関係のトラブルに巻き込まれるリスクを減らすことができるはずです。