日本製鉄がUSスチールに140億ドル(約2兆1000億円)を投資すると明らかにし、「米鉄鋼業界史上で最大の投資だ」と成果を誇った。さらに日本製鉄がUSスチールの従業員に5000ドル(約75万円)のボーナスを支給することに言及して、会場を盛り上げた。

関税を盾に投資を迫る
トランプのあめとむち

 USスチールは米産業界を代表する伝統企業だ。「鉄鋼王」と呼ばれたアンドリュー・カーネギーが興した鉄鋼メーカーを前身として1901年に設立された。その歩みは米鉄鋼業の歴史と重なる。かつては世界最大の鉄鋼会社だったが、設備の老朽化が進み、採算が悪化した。窮余の策として、自動車の高級鋼板や脱炭素化などで高い技術力を誇る世界4位の日本製鉄による買収を受け入れた。

 もっとも、外国企業による買収には米国民の一部に根強い抵抗感があり、伝統企業の行方は政治の争点となった。バイデン大統領(当時)は2025年1月、安全保障上の懸念を理由に買収の禁止命令を出した。トランプ氏も当初は買収計画について、「即座に阻止する」と強く反対していた。経済のグローバル化の波にさらされ、雇用の先行きに不安を抱いてきた労働者層への配慮が背景にあったが、日本製鉄による巨額投資が米国内の雇用拡大や競争力強化につながると判断すると、一転して容認へと転じた。

 トランプ氏は演説で「地球上で最高の鉄鋼は、永遠に米国で生産され続ける」と述べ、3月に始めた鉄鋼への関税率を25%から50%に引き上げる方針も表明した。日本製鉄のように米国内に投資すれば恩恵を与えるが、そうでなければ、関税の「壁」で米国への鉄鋼製品の輸出は立ちゆかなくなるとの強烈なシグナルを放った。

鉄鋼労働者はなぜ
「トランプ支持」に傾くのか

 鉄鋼業を取り戻すというメッセージに、会場はまるでトランプ氏の選挙集会のような熱気に包まれた。トランプ氏に招かれて壇上に立ったUSスチール従業員のブライアン・パブラックさん(51)は、「トランプ大統領は歴代大統領の取り組みすべてを足しても及ばないほどの支援を、米鉄鋼業界に提供してきた。関税が中国の鉄鋼ダンピング(不当廉売)を止めてくれた」と声を震わせた。