「構想力・イノベーション講座」(運営Aoba-BBT)の人気講師で、シンガポールを拠点に活躍する戦略コンサルタント坂田幸樹氏の最新刊『戦略のデザイン ゼロから「勝ち筋」を導き出す10の問い』(ダイヤモンド社)は、新規事業の立案や自社の課題解決に役立つ戦略の立て方をわかりやすく解説する入門書。戦略とは何か。変化の時代に、企業は何を問い直すべきなのか。本連載では、さまざまな経営や組織の悩みについて坂田氏に話を聞きながら、同書の考え方を現在進行形の課題へと結びつけていく。
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優秀な人ほど、不満を大きな声でぶつけてこない
「最近、あの人元気がないな」と思っていたら、突然退職願が出てきた――そんな経験をしたリーダーは少なくないのではないでしょうか。
優秀な人ほど、不満を大きな声でぶつけてきません。むしろ静かに状況を観察し、見切りをつけると淡々と去っていきます。
では、優秀な部下が「もうここにいても意味がない」と辞意を固める瞬間とは、いったいどんな場面なのでしょうか。
その瞬間は、何気ない一言から始まる
こんな場面を想像してみてください。
入社3年目の田中さんが、担当プロジェクトの改善案をまとめ、上司であるあなたに提案してきました。準備に1週間をかけた渾身の企画書です。
しかし、あなたは資料をざっと眺めて、こう言いました。
「これって本当に必要? 今のやり方で十分じゃない?」
田中さんは反論しません。
「そうですね。もう少し考えてみます」そう言って、田中さんは静かに引き下がりました。
優秀な部下が失望する瞬間は
「否定されたとき」ではない
ここで誤解しないでほしいのですが、部下は自分の提案が必ず通るとは思っていません。提案が却下されること自体は、そこまでの問題ではないのです。
優秀な部下が本当に失望するのは、「この上司は何も決められない」と察した瞬間です。
「これって本当に必要?」
一見すると慎重に検討しているように聞こえるかもしれません。問題は、その後に上司自身の判断と、その判断に責任を持つ覚悟が続かないことです。
この言葉の裏に、自分では判断したくない、責任を負いたくないという姿勢が見えた瞬間、優秀な部下ほど「この人は自分で決めようとしていない」と敏感に感じ取ります。
「この人についていっても、何も変えられない」
そう確信したとき、部下の心は静かに離れていきます。
リーダーに求められるのは
「正解」ではなく「判断」
初めてチームのリーダーを任された人が陥りやすいのが、「決められないリーダー」になってしまうことです。
変化にはリスクが伴い、意思決定には責任も伴います。だからこそ、「現状のままでいいのではないか」と考えてしまう。その気持ちは理解できます。
しかしそうした姿は、部下の目には「方針を持たないリーダー」として映っています。
意見を言うだけでは、リーダーとしての役割を果たしているとは言えません。
そして、リーダーに求められるのは、正しい答えを出すことではありません。不確実な状況の中でも、自分の言葉で方向性を示し、判断することです。
今日から変えられる
たった一つの習慣
あなたは最近、部下の提案に対してこんな言葉を使っていないでしょうか。
「それって本当に必要?」
「上がなんと言うか次第だね」
「今は忙しいからまた今度」
どれも悪意はありません。しかし、これらの言葉が積み重なったとき、優秀な部下ほど、静かに心を閉ざしていきます。
まずは、自分の判断を言葉にすることから始めてみてください。賛成でも反対でも構いません。
「私はこう考える」
「だからこう進めよう」
その一言が、部下の信頼を生みます。
優秀な人材が辞めるのは、待遇や環境だけが理由ではありません。この人についていきたいと思えるリーダーがいるかどうか。その差が、組織の未来を大きく左右するのです。
IGPIグループ共同経営者、IGPIシンガポール取締役CEO、JBIC IG Partners取締役。早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)。ITストラテジスト。
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト・アンド・ヤング(現フォーティエンスコンサルティング)に入社。日本コカ・コーラを経て、創業期のリヴァンプ入社。アパレル企業、ファストフードチェーン、システム会社などへのハンズオン支援(事業計画立案・実行、M&A、資金調達など)に従事。
その後、支援先のシステム会社にリヴァンプから転籍して代表取締役に就任。
退任後、経営共創基盤(IGPI)に入社。2013年にIGPIシンガポールを立ち上げるためシンガポールに拠点を移す。現在は3拠点、8国籍のチームで日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。
単著に『戦略のデザイン ゼロから「勝ち筋」を導き出す10の問い』『超速で成果を出す アジャイル仕事術』、共著に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(共にダイヤモンド社)がある。




