最悪クビの極限状態→社長が放った「ひと言」にゾッとする…【マンガ】『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク

三田紀房の起業マンガ『マネーの拳』を題材に、ダイヤモンド・オンライン編集委員の岩本有平が起業や経営を解説する連載「マネーの拳で学ぶ起業経営リアル塾」。第66回では、買収防衛策である「ホワイトナイト」について解説する。

まさに前門の虎と後門の狼

「競合企業である一ツ橋商事からの買収防衛対策の総司令官をやれ」――アパレル企業・T-BOXの代表である花岡拳から指示を受けた、創業期メンバーで役員の大林隆二。しかし大林は一ツ橋商事の井川泰子と共謀し、T-BOXの買収をサポートすることを画策していた。

 怪しい態度を見せれば背任行為で花岡に切られ、一方では井川からの圧力もある。「ヘタをしたら確実に…死ぬ」とうめく大林。一歩間違えたらクビ、まさに前門の虎と後門の狼に挟まれた状態となる。

 そんなT-BOXの買収防衛のために花岡が招聘したのは、かつてT-BOXの上場を支援した証券コンサルタントの牧信一郎だった。牧は買収防衛策として、ホワイトナイト(白馬の騎士)をはじめとした手段を紹介する。

 すでに井川と大林の関係を把握している花岡だが、あえて大林を追及せず泳がせる。

「ウチを買収だなんて、井川もふざけたヤツですよね」とうそぶく大林に、「本当にそう思うか?」と返す花岡。代わりに「しっかりと井川の身辺を探って、できる限りの情報を集めろ」と指示するのだった。

友好的な第三者と買収・合併する「ホワイトナイト」

漫画マネーの拳 8巻P78、79『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク

 買収防衛策というと、敵の攻撃から身を守ったり、あらがったりするための「武器」のように聞こえるかもしれない。しかし、ホワイトナイトは少し性格が違うものだ。敵対的な買収者に対峙(たいじ)した企業に対して、より友好的な第三者が買収や出資をすることで支えるという手法だからだ。

 つまりホワイトナイトは、買収そのものを「なかったことにする」という魔法ではない。むしろ、「誰に会社の未来を託すのか」を選び直すための選択肢と言える。敵対的な相手に飲み込まれるくらいであれば、自社の事業や従業員、取引先に理解のある相手と組む。これは買収防衛のための対策であると同時に、M&A(企業の買収合併)の先を探す行為でもある。

 もう20年近く前になるが、2005年に当時のライブドアがフジテレビの親会社だったニッポン放送に対して敵対的TOB(株式公開買い付け)を仕掛けたときには、SBIホールディングスがホワイトナイトとして名乗りを挙げたことで注目を集めた。

 2021年には東京機械製作所と投資ファンドが対立した際、読売新聞東京本社など新聞有志6社が株式を取得するに至った。東京機械製作所は新聞の輪転機を製造する、日本でも数少ないメーカーだ。

 新聞社らが株主になることで、経営の安定化が図られた。敵対的な相手を避け、事業への理解がある第三者に支えてもらう。これがホワイトナイトの基本的な発想だ。

 25年にはニデックが牧野フライス製作所の敵対的TOBを計画。間もなくして投資ファンドのMBKパートナーズ​がホワイトナイトとして名乗りを挙げた。結局ニデックはTOBを取り下げ​、MBKが牧野フライス買収に動いたが、外為法により日本政府から中止勧告を受けた。

 とはいえ、ホワイトナイトを探すことはそう簡単ではない。企業同士である以上、経済的な合理性がなければ、自社の株主の反発を招くことにもなりかねない。

 牧は、T-BOXのホワイトナイトたりえるのは、創業時の出資者でもある投資家・塚原為ノ介だろうと花岡に提案する。大林から一連の動きを聞いた一ツ橋商事の井川は、花岡より先に、と自ら塚原のもとを訪れるのだった。

漫画マネーの拳 8巻P80『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
漫画マネーの拳 8巻P81『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク