
AIやデータセンターの電力需要増や各国のエネルギー安全保障の強化を背景に、グローバルで巨大プラントの建設計画が相次いでいる。ところが、日揮ホールディングス、千代田化工建設、東洋エンジニアリングのエンジ「御三家」は空前の商機を目の前に、プロジェクトを「断る」姿勢を鮮明にしている。従来、エンジ業界にとって成長の定義は受注高増だったが、インフレ時代に突入し、収益と事業の大きなボラティリティ(変動)を抑えるべく経営思想を大きく転換しているのだ。連載『エネルギー動乱』内の特集『日揮・千代田化工・東洋エンジ エンジ「御三家」の反転攻勢』の本稿では、エンジ3社が「請負業」の宿命をどう乗り越え、再び成長産業へ転じようとしているのかをレポートする。(エネルギージャーナリスト 宗 敦司)
グローバルで空前のプラントブーム
エンジ3社は「断る経営」に転換へ
AIやデータセンターの電力需要増や各国のエネルギー安全保障の高まりを背景に、グローバルで巨大プラントの建設計画が相次いでいる。空前ともいえるプラントブームの渦中にあるのだ。ところが、日揮ホールディングス(HD)、千代田化工建設、東洋エンジニアリングのエンジニアリング大手3社は「案件を追いかける経営」から「案件を断ることも辞さない経営」へと、大きくかじを切っている。
東洋エンジの細井栄治社長は7月下旬のダイヤモンド編集部の取材に対し、「(受注して)よい案件、やってはいけないリスクのある案件、当社では追い切れない案件を分類し、受注前に審査して決めることで、損失リスクを7割削減できる」と強調。契約条件や工期に無理がある案件を徹底的に排除し、「超安定志向」にシフトする方針を明らかにした。
同じく7月下旬にインタビューに応じた千代田化工の太田光治社長は、過去6年で2度も赤字転落を招いた北米などの大型一括請負リスクを避けるため、主力の大型LNG(液化天然ガス)であっても固定価格一括請負(ランプサム)での受注を原則封印したと明かした。太田氏は「今まではプラントを納めておしまいだったが、われわれも事業者に近づくポジションでの稼ぎ方をやっていかないといけない」と明言する。
従来、エンジニアリング業界は売り上げ規模を維持・拡大するために無理な工期や厳しい支払い条件であっても競って受注する「受注量競争」が横行していた。ところが、大手のトップの発言からは徹底した冷徹さと危機感がにじむ。
なぜ、エンジ各社は姿勢を大きく転換しているのか。それは、世界的なプラント需給の構造が決定的に変化したためだ。プラント需要は急増しているが、実際に設計し、世界中から資機材を調達し、何千人、時には数万人にも及ぶ作業員を指揮して巨大な設備へと組み上げることのできるエンジ会社は、世界でも指で数えるほどしか存在しない。
付随して、複雑な大型プロジェクトを遂行できる人材、現地施工を担当する建設会社、主要な資機材の生産枠、そして高度なプロジェクト管理能力そのものの奪い合いも過熱の一途だ。この構造が発注者側とエンジ側の力関係を変えつつある。従来、発注者側の買い手市場が、エンジ側の売り手市場に変化してきているのだ。
経営環境が大きく変わる中、エンジ3社はどう収益を確保しようとしているのか。次ページでは、3社の最新決算を基に、各社が抱える、旧来のビジネスモデルによる後遺症と経営モデルの転換の必然性について解説。新たな収益基盤として3社が狙う市場や、三者三様といえる具体的な「稼ぎ方」や「生存戦略」を明らかにしていく。







