「中国の不動産バブル、その“生みの親”は日本だった!?」――。恒大集団の経営危機をきっかけに、中国経済の失速が世界を揺らしている。しかし、そもそもなぜ中国の不動産価格は会社員の年収の50倍という異常な水準まで膨れ上がったのか。そこには、日本の「定期借地権」をヒントにした制度と、市政府が土地売却で莫大な利益を得る仕組みがあったという。さらに、中国人が日本の不動産を買う理由や、EV(電気自動車)・AI(人工知能)ブームの裏側まで、中国経済研究の第一人者・柯隆氏が徹底解説。中国経済の“病巣”と“次のリスク”が見えてくる。(丸山紀一朗、ダイヤモンド・ザイ編集部)
※前編の「日本のバブル崩壊とは大違い…ゆっくり傷が広がる中国経済、その重すぎる代償」はこちら。
中国の不動産バブルには日本も関係していた!?
「定期借地権」が市政府にもたらした“莫大な資金”
柯隆(か・りゅう)さん●公益財団法人東京財団常勤研究員。1963年、中華人民共和国・江蘇省南京市生まれ。1988年来日、愛知大学法経学部入学。1992年、同大卒業。1994年、名古屋大学大学院修士課程修了(経済学修士号取得)。長銀総合研究所国際調査部研究員(1998年まで)。1998~2006年、富士通総研経済研究所主任研究員、2006年より同主席研究員を経て、現職。
柯隆(以下、柯) なぜ市政府が困るかというと、不動産バブルが膨らんでいた時に一番得をしたのが市政府だからです。中国の不動産の所有権は国にありますが、この話の肝は、土地の使用権を払い下げた「定期借地権」にあります。
実は、中国の不動産バブルが膨らんだきっかけは、日本に関係しています。1995年に上海で行われたシンポジウムで、ある日本人の専門家が「中国の都市再開発には日本の定期借地権という制度が参考になる」と話しました。所有権は動かさず、土地を一定期間使う権利を設定して払い下げ、満期になったら更地にして返してもらう、というものです。
それを聞いた中国の共産党幹部が「それは良い」と思ったので、中国でも定期借地権が導入されました。住宅用地の場合、期間を全国一律70年に設定しました。あまり短すぎるとすぐ満期になって困るということで、経済学的な根拠などなく、70年に設定されたのです。当初は「70年後のことはその時の人に任せよう」という考えがあったと思います。
これで都市再開発が始まりました。1995年に上海でシンポジウムが開かれ、恒大集団が創業されたのは1996年です。他の大手デベロッパーもだいたいその頃に創業された。定期借地権が設定されたから、こういう会社が生まれたわけです。私は1994年にエコノミストになって、1995年のシンポジウムにも参加したので、その一部始終を見ています。
――そして地方の市政府に飛び火すると、その後はどうなるのでしょうか?
柯 市政府が土地の使用権を払い下げて、たくさんの財源を手に入れたのです。中国政府が「土地の使用権を払い下げた時の売上は各々の市政府の財源にする」と決めたからです。もし中央政府の財源にしていれば、ここまで地上げされなかったと思いますが、市政府の財源としたため、市政府とデベロッパーが結託して1坪の単価を上げるように地上げをした。これが原因で不動産バブルが起きたのです。
市政府に入ってきた莫大な資金の用途は、大きく3つありました。








