『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
三田紀房の起業マンガ『マネーの拳』を題材に、ダイヤモンド・オンライン編集委員の岩本有平が起業や経営を解説する連載「マネーの拳で学ぶ起業経営リアル塾」。第67回では、大株主の権限について解説する。
「私は…神になりたいんだよ」
アパレル企業T-BOXの買収を目指す大手商社・一ツ橋商事の井川泰子は、T-BOXを創業期から支える投資家で、今もT-BOXの大株主である塚原為ノ介のもとを訪れる。塚原は「時間がもったいないので」と、単刀直入に「T-BOXの大株主である自分の腹を探りに来たのだろう」と、井川の狙いについて尋ねる。
そんな塚原に対し、「お察しの通り」と語り、素直に買収の意図を説明する井川。すると塚原は「若い熱血経営者と大企業をバックにした女性エリートが激戦の火蓋を切って落とす。実に愉快だ」と語って笑みを浮かべる。
塚原の態度に趣味の悪さを感じる井川だが、塚原は「黙ってても金がもうかるシステムは完成してしまって、ビジネスでは興奮しない」「もっと血が騒ぐ刺激が欲しいんだよ」と続ける。
経済は合法的な戦争であると井川に説く塚原。その戦いが派手なほど面白く、大衆はそれをネタに盛り上がり、居酒屋での酒量が増える。そうすることで消費が押し上げられ、経済効果を生み、市場を活性化させる。つまりは戦いこそが人類を繁栄に導くのだとまで論じる。
そして塚原は、買収において井川とT-BOX創業者・花岡拳との間で中立な立場を取ることを約束。自身は最後の審判を下す立場になりたいのだとして、こう言い放った。
「私は…神になりたいんだよ」
「株主阿鼻叫喚ホールディングス」驚きの株主提案
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
登場時から圧倒的な成功者として描かれてきた塚原だったが、今回は「株式を持つ者こそが最後にものを言う」と言わんばかりの露悪的なセリフを語る。だが実際、現実の上場企業においても、大株主の意見は強い。
前回までには敵対的TOB(株式公開買付)の話題が出たが、株主構成次第とはいえ、つまるところ大株主が株を売らなければ、最終的な支配権を握ることは難しいからだ。逆に、現経営陣がどれだけ抵抗したところで、大株主が買収提案に応じれば、一気に形勢が傾くこともある。
株式の保有比率によって、その会社への影響の行使度合いは大きく変わる。議決権ベースで株式の3分の1以上を持てば、合併や事業譲渡など重要事項に関わる特別決議を止めることができるし、過半数を握れば、取締役の選任といった普通決議に強く関与できることになる。
「神」とまでは言わずとも、「審判」にはなり得るというわけだ。
ちなみに1%以上か300個以上の議決権を持つ場合は、株主総会にて株主提案をすることができる。
2012年には、野村ホールディングスの社名を「野菜ホールディングス」に変更するよう求める株主提案が出たり、2026年5月にも、いよぎんホールディングスで「いよぎん株主阿鼻叫喚ホールディングス」への変更を求める株主提案が出て話題になった。経営に対する株主の不満からの皮肉まじりの提案だったが、いずれも通ることはなかった。
T-BOX幹部でありながら、井川のM&Aに加担する大林隆二は、花岡から指示された買収防衛策の立ち上げに向けて、証券コンサルタントの牧信一郎の元を訪れる。
花岡が大林の裏切りを知ったうえで、あえて買収防衛のリーダーに据えたことを知る牧は「普通の経営者なら怒り狂って八ツ裂きにしてきたところなのにそれをしない」と花岡の不気味さ、恐ろしさを語り始めるのだった。
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク







