たとえば、冒頭に述べたように、AIを使うことで、「単位時間当たり生産性」が3倍になったとします。

 これにより、8時間×20日=160時間/月の労働時間のうちの、たった3分の1、すなわち53.3時間で、ひと月分の仕事がこなせるようになったわけですね。

 では、残りの時間(106.7時間)、その人は何をするのでしょうか?

 空いた時間で「生産し続ける」人もいるでしょう。これは、生産“量”UPに直結します。

 その時間を「勉強に充てる」という人もいるかもしれません。短期的には生産“量”UPには寄与しませんが、スキルアップを通じて中長期的には効いてくる可能性があります。

 一方で、その時間を「余暇に充てる」という人がいてもおかしくはありません。この人の場合は、生産“量”は増えない、ということになります。

 そもそも、AIを使っても「単位時間当たり生産性」が上がらない、もしくは、低下してしまう人もでてくる可能性があります。

 こうした人たちが、何割ずついるのか、によって、その組織・チームの生産性に対するAIの影響は大きく変わってきます。

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チームに求めるのは、生産量であるべき

 組織・チームを率いるマネジャーとして、生産性の議論をするのは極めて大切です。

 しかし、その際に「単位時間当たり生産性」だけを追いかけてはいけません。

 特に、AIという新たな技術の波によって、ひとりひとりの作業効率が大きな影響を受け、仕事のやり方が劇的な変動を遂げようとしているこのタイミングには、ついつい「単位時間当たり生産性」に目を奪われてしまいがちです。

 組織・チームが目指すのは「組織・チーム全体の生産性」つまり、生産“量”の最大化です。

 これは「一人当たり生産性」×人数で導き出されます。

 そして、「一人当たり生産性」は、「単位時間当たり生産性」×労働時間です。

 チームA:「単位時間当たり生産性」が10の人が、5人、毎日8時間ずつ働く
 チームB:「単位時間当たり生産性」が7の人が、5人、毎日12時間ずつ働く
 という場合では、チームAの生産量は400、チームBの生産量は420です。

 チーム全体として「生産性が高い」のは、Bである、ということになるわけです。

 どれだけ「単位時間当たり生産性」が高い人を揃えても、皆が時短勤務だったり、何があっても必ず定時に変えるワークスタイルを貫いたりしていると、生産“量”は増えていきません。

 反対に、多少、「単位時間当たり生産性」が低い人たちでも、長時間、生産活動に従事すれば、生産“量”は増えていきます。

 AIを使って、生産性を上げる、という際にも、必ず「それで、チームの生産性は上がったのか?」つまり「チーム全体の総生産“量”は増えたのか?」をKPIとして確認しなければいけません。

・○○の仕事が楽になった
・××の作業が一瞬で終わるようになった
・■■のドラフトが、凄い速度でデキてくるようになった

 こうした話は、「単位時間当たり生産性」の話です。しかも、場合によっては、それすらも引き下げている可能性がある話です。

 マネジャーとしては、個別の業務の改善が進むことを喜ぶのと同時に、

・そもそも、その改善によって、本当に生産性は上がったのか(それに関連して、内容確認や手直しなどの別の作業が増えてしまっていないか)
・それによって生み出された時間で、他にどういう生産活動をしているのか

 などを、しっかり確認し、メンバーひとりひとりの「一人当たり生産性」および、チーム全体の生産性」の観点で、生産量が増えていることを確認していく必要があります。

 メンバーが喜ぶ中、それに冷や水を浴びせかけるようなことはしたくないと思いますが、成果に対して、冷静な視点を持つことが、マネジャーの重要な責務のひとつであると強く認識しておくべきでしょう。