『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
三田紀房の起業マンガ『マネーの拳』を題材に、ダイヤモンド・オンライン編集委員の岩本有平が起業や経営を解説する連載「マネーの拳で学ぶ起業経営リアル塾」。第68回では、「上司の期待」が部下に与える影響について解説する。
スーパー勝気なお局社員が泣いた…!
上場アパレル企業・T-BOXの創業期メンバーであり、現役幹部でもある大林隆二は悩んでいた。
競合である大手商社・一ツ橋商事の井川泰子と内通し、一ツ橋商事によるT-BOXの買収計画に加担していたが、それがT-BOXの創業社長である花岡拳に露呈。しかし花岡は大林をクビにするどころか追及すらせず、買収防衛策を取りまとめるリーダーに任命したからだ。
「その真意を確かめなければ、命が縮む。身がもたない」
大林は、買収防衛策を練る証券アドバイザーである牧信一郎に、花岡の真意を問いただす。しかし一連の事情を知る牧は「自分の目的はT-BOXの企業価値向上だけ」と述べ、真意をはぐらかし続ける。
牧すらも信じられない大林は「俺一人のカンと度胸で生き抜いてやる」と思うと同時に、このまま計画が失敗すればもう二度とはい上がれない気がすると悩み続ける。
一方、大林とともに買収計画に加担する生産担当のトップ・片岩八重子(ヤエコ)は、花岡から新開発の超極細ファスナーに関わる技術研究を任される。
花岡はヤエコの裏切りを知りながら、あえて指摘することなく熱い言葉を投げ掛ける。
「ヤエコさんは我が社の技術部門トップ。あんたの外に誰がいるんだ。あんたしかいないだろ」
「ヤエコさん、あんたの力が不可欠…そこは信頼してあんたにすべてをまかせたい」
「あとはヤエコさんが俺を信じるか、信じないかだ」
その言葉にヤエコはさめざめと涙を流す。
「社長…やるから」「大丈夫…まかせて」
普段は超勝気な「お局社員」ヤエコの意外な涙に、同僚たちも思わず息を呑むのだった。
期待でパフォーマンスが上向く○○○○○○効果
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
他者からの期待が、自身のパフォーマンスを向上させることを心理学の世界では「ピグマリオン効果」と呼ぶ。信じる気持ちが伝わることでモチベーションが高まり、結果として一層努力するようになり、能力が引き出されるのだという。
もちろん、大林やヤエコのような“背信者”を簡単に信じてうまくいくほどほど、現実は甘くない。だが花岡が「あなたの能力が必要だ」と重い言葉を投げかけたことで、ヤエコは同じ旗の下に引き戻された。
花岡はこのあと、「堂々と社長としての主張をしたまで」と語るが、これはピグマリオン効果を経営の場で実践した事例とも言えるエピソードだろう。
ちなみに、他者からの評価が低い結果、自身のパフォーマンスが低下することを、「ゴーレム効果」と言う。つまり、経営者や管理職は、部下に期待することが重要なのだ。
ヤエコに買収計画からの離脱を宣言された大林は、一ツ橋商事の井川にその旨を報告する。いよいよ花岡が反撃に打って出たことを把握した井川は、次の一手を画策する。
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク







