用地買収の難航、地質上のトラブル、新型コロナの直撃が重なり、当初60億ドル超とされた建設費は最終的に72.7億ドル(約113兆ルピア)まで膨らんだ。約12億ドルの超過分を補うため、インドネシア政府は結局、国家予算の追加投入を強いられる。
CDBからの当初融資金利は2%だったが、超過分には3.4%が適用され、年間の支払利息だけで約1億2100万ドルという重い負担がのしかかった。需要予測も外れ、1日5万人と見込まれた乗客は実際には1万8000人前後にとどまる。
Whoosh事業に60%を出資するインドネシア側コンソーシアムPSBIは、2024年に4兆1900億ルピアの損失を計上し、2025年上半期にも1兆6200億ルピアの損失を計上した。
PSBIの最大株主であるインドネシア国鉄KAI(出資比率58.53%)が負担した損失は、2024年に2兆2300億ルピアに達し、建設を担ったWIKAは株式取引停止処分まで受けている。
汚職撲滅委員会(KPK)が建設費水増し疑惑の予備調査に動き、プラボウォ政権は2025年に新設のソブリンウェルスファンド「ダナンタラ」を主導役に、中国側との債務再編交渉へ追い込まれた。
ここで台湾高速鉄道に目を移したい。
地震・台風に強い
日本の新幹線技術が採用
1990年代、経済が急成長し、西海岸の都市間交通が限界を迎えた台湾は、当初フランスのアルストム(TGV)やドイツのシーメンス(ICE)を擁する欧州連合と契約交渉を進めていた。
流れを変えたのは1999年9月の集集大地震である。地震・台風という日本と台湾に共通する厳しい自然環境下で、新幹線の早期地震検知システムや脱線防止機構の実績が決定的に評価され、2000年に技術選定は新幹線へ切り替わった。
ただし台湾高速鉄道は、車両と運行・信号システムこそ日本の700系をベースとする700T型だが、土木構造や一部設備は欧州規格を採用したハイブリッドである。事業はBOT方式という民間主導スキームで進められ、JR東海らの日本企業連合は設計・製造・人材育成を担うビジネスパートナーとして参画した。
その台湾も、最初から順風満帆だったわけではない。開業後の需要は予測を大きく下回り、35年というBOT方式に伴う短い事業運営期間のもと、莫大(ばくだい)な減価償却費がのしかかった。毎年50億~100億台湾ドルの赤字が垂れ流され、2013年時点で負債総額は4570億台湾ドル、純資産はマイナスに転落する。
優先株主からの約540億台湾ドルの返還訴訟も重なり、2015年には手元資金が20億台湾ドルを割り込み、倒産が目前に迫った。現在のインドネシアと財務面でよく似た構図である。
絶体絶命の台湾高速鉄道が
息を吹き返した最大の要因は
絶体絶命の局面で台湾当局は外科的手術を断行した。







