上司や経営層の「尊敬できる人」。そういう人を心から「すごい」と感じているのに、自分ごときが褒めていいのだろうか、ゴマすりだと思われないか…などと伝えるのを躊躇してしまう人は意外に多いようです。「体」「時間」「環境」「思考」「心」「人間関係」をととのえるための具体的な習慣術を書いた『ととのえる。―超忙しくてもいつもご機嫌な人の習慣術―』(ダイヤモンド社刊)から、抜粋・編集して、紹介します

上司を褒めるのが苦手な人へ。「ゴマすり」にならない伝え方Photo: Adobe Stock

上司や社長を、自分ごときが褒めるってアリ?

 上司や経営層、あるいは社外の「すごい人」。そうした存在を前にしたとき、心から「すごい」と感じているのに、うまく言葉にできない人は意外と多いのではないでしょうか。

「自分のような若手が褒めるなんて、おこがましいのではないか」「ゴマすりだと思われたらどうしよう」。その気持ちはわかりますが、そうして自分の中に壁を作り、言葉をのみ込んでしまうのは非常にもったいないです。

 人間関係をととのえるためには、立場の上下にかかわらず、一人の人間として「心と心の通う瞬間」を増やすことが大切だからです。

上司も経営者も、一人の「不安な人間」である

 そこで、どれほど偉い人にでも臆せずポジティブなメッセージを伝えるための、僕なりの作法を紹介します。

 まず知っておいてほしいのは、どんなに大きな責任を背負っている人であっても、その内側は僕たちと同じ「一人の人間」だということです。

 たとえば、全社員向けのリモート発表を終えた執行役員。
 とんでもないプレッシャーの中で株主総会を乗り切った社長。

 彼らは毅然と振る舞ってはいますが、心の中では「今の話はちゃんと届いただろうか」「みんなの心に響いただろうか」と、常に不安や孤独を抱えているかもしれません。

 立場が上になればなるほど、本音のフィードバックをもらう機会が減り、自分の行動が正しかったのかという手応えに飢えているのです。

 そんなとき、部下から届く「あの発表、最高でしたね」という一言は、彼らにとって何よりの救いになります。

 このとき大切にしたいのは、「褒める」という上から目線の評価ではなく、相手の不安に寄り添う「ねぎらい」や「共感」のニュアンスです。

「僕だけじゃなく、横にいた若手もみんな頷いていましたよ」といった事実を添えて伝えてみてください。評価ではなく、「届いたという兆し」を伝えること。それが、相手の心を最も温めます。

「褒める」という言葉が重たすぎるなら、SNSの「いいね!」ボタンを押すような、カジュアルなコミュニケーションだと捉え直してみましょう。

 僕の場合、上司や目上の人と話すとき、あえて「仕事以外の領域」でポジティブな反応を返すことがよくあります。

 家庭菜園が趣味の上司に、「週末は天気が悪かったですけど、畑は大丈夫でした?」と聞き、相手が「雨の中、夫婦で収穫したよ」と返してきたら、「えっ、雨の中ですか? すげー、体力ありますね!」と返す。

 ここには「ゴマすり」も「計算」もありません。ただ、目の前の相手に対して「いいなぁ」「すごいなぁ」と思ったことを、その瞬間にポーンと口に出すだけです。

 お世辞を言おうとするから不自然になります。

 そうではなく、相手をよく観察し、素敵だなと感じるポイントを見つけては、気軽に「いいね!」を投げていく。このシンプルで開かれたコミュニケーションこそが、風通しのよい関係性をととのえてくれるのです。

尊敬をベースに、同じ景色を「共に乗り越える」

 僕が秘書をしていた頃、最も大切にしていたのは、経営陣が常に高いモチベーションを維持できる環境を作ることでした。

 たとえば厳しい会議や取材等を終えて戻ってきたとき、「いやぁ、乗り切りましたね! あの緊張感、普通なら誰でも足がすくみますよ。お疲れさまでした」と声をかける。

 これは、単なる称賛ではありません。「尊敬はしつつも、同じ会社の一員として、大変な状況を一緒に乗り越えましたね」という連帯のメッセージです。

 上司や経営陣といった偉い人を遠い世界の住人にしてはいけません。同じプロジェクト、同じ課題、同じ時代を戦う「戦友」として、その健闘をたたえ合う。そこに嘘や下心がない限り、あなたの言葉が「おべっか」と捉えられることはありません。

 偉い人、すごい人を特別視して壁を作るのをやめる。

 一人の人間として向き合い、カジュアルに「いいね!」を届け続ける。

 その積み重ねが、あなた自身の信頼残高を爆速で増やしていくのです。