遊びやゲームで負けそうになると、怒る、泣く、ズルをする――。子どものそんな姿を見て、つい厳しく叱ってしまう親も多い。しかし、その行動だけを見て判断すると、子どもの成長の芽を見落としてしまうこともある。親はどのように関われば、子どもの成長につなげられるのだろうか。本記事では、教育評論家の親野智可等氏に「負けず嫌いな子どもへの関わり方」について話を聞いた。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局・佐藤里咲)

「よく泣く子ども」が伸びる理由・ベスト1Photo: Adobe Stock

「負けたくない気持ち」の重要性

――遊びのなかで、負けそうになると怒る、ズルをする、泣くといった行動をしてしまうお子さんは多いですよね。このようなとき、親はどのように関わると良いのでしょうか。

親野智可等氏(以下、親野) こういうお悩みはとても多いです。
まず親としては、それを全部悪いことだと思わない方がいいですよ。

負けそうになると怒ったり、ルールを破ってでも勝とうとしたりする。
もちろん困る行動ではあるんですけど、その根っこにある「負けたくない」という気持ちは、実は向上心の表れでもあるんです。

もっとできるようになりたい。もっと成長したい。
そういう気持ちが強いからこそ、負けることが悔しいわけです。

負けず嫌いというのは、生きていくうえでとても大事なエネルギーなんですね。

例えば、将棋界で大活躍をしている藤井聡太さんは小学生のとき大会で負けると、手がつけられないくらい大号泣していたそうです。
それくらい悔しがる人だからこそ、向上心を持って努力し、今の地位があるんですよね。
スポーツ選手でも、ビジネスマンでも、成功する人には「負けず嫌いだった」という人が結構多いんです。

だからまず、「この子は負けず嫌いなんだな」「向上心が強いんだな」という見方もしてあげてほしいですね。

――どんなことでも成功するためには「負けたくない」という気持ちが大切ですよね。

親野 そうですね。
それから親御さんには、「子どもは前頭葉が十分に発達していない」ということも理解しておいてほしいです。

負けそうになるとギャーッと騒ぐ、悔しくて怒るというのは、脳の中の「扁桃体」という、感情をつかさどる部分が燃え盛っている状態なんです。

その扁桃体にブレーキをかけるのが前頭葉なんですが、子どもはまだその働きが十分ではありません。
だから感情を抑えきれないんですよね。

でも成長とともに、前頭葉が発達してくると、だんだん感情をコントロールできるようになります。
ですから、ある程度は成長を待つということも大事なんですよ。

負けたときをイメージさせる

――脳の発達的にも、このような状態はある意味しょうがないことでもあるんですね。でも親としては、このような状況でお友達とうまくやれるのかが心配になってしまいます。

親野 そんなときに大事なのは、「事前準備」です。

例えばゲームやカルタをやる前に、「これは勝つ人と負ける人がいるゲームだよね」「勝ったらどんな気持ちになる?」「負けたらどんな気持ちになる?」と聞いてみる。
そして、「じゃあ負けたときはどうする?」と考えさせるんです。

日頃からそういう話をしておくと、負けてしまって起こりそうになったら「深呼吸をする」、「もう一回やろうと友達を誘う」というような答えが出てくるようになります。

大事なのは、負けたときの行動を事前に考えてさせることなんですね。

――『まいにちがたのしくなるおやくそく できるかな?』には、「ルールをまもってあそぼう」という項目があります。「しあいに かっても まけても けっかを みとめよう」という言葉が本文にありますが、これもまさに「負けた時の行動を事前に考えさせておくこと」ですね。

「よく泣く子ども」が伸びる理由・ベスト1『まいにちがたのしくなるおやくそく できるかな?』より引用
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・じゅんばんを まもろう。
「こんどは ぼくの ばんだね」
・みんなの いけんを だいじに しよう。
「そうだね、 おにが ふたりでも いいね」
・あぶないことは しないよ。
「あしを ひっかけちゃって ごめんね」
・しあいに かっても まけても けっかを みとめよう。
「まけちゃったけど たのしかったよ!」「また いっしょに あそぼう!」

『まいにちがたのしくなるおやくそく できるかな?』より引用

親野 そうそう。こんな風に負けたときのこともイメージできるといいですね。

親が気をつけるべき叱り方

親野 加えて、親御さんに気をつけてほしいのが人格を否定するような叱り方です。

「そういうのはずるいことだよ」「意地悪な子だね」「ズルする子はダメだね」
こういう言い方をすると、子どもは「僕はずるい子なのかな」と思ってしまうことがあります。

ですから、人格ではなく行動について話すことが大切です。
まずは一緒に深呼吸をして気持ちを落ち着かせましょう。
そのあと、「負けて悔しかったんだね」と気持ちを代弁してあげる。
子どもはまだ自分の気持ちをうまく言葉にできませんから、言語化することを手伝ってあげるといいですよ。

そして、どうしても手がつけられないときは、少し見守ることも大事です。
ずっと怒り続けることはできませんから、やがて落ち着いてきます。
そのときに、「自分で落ち着けたね」と声をかけてあげる。

これがすごく大事なんです。
そうすると、「僕は自分で落ち着けるんだ」という感覚が育っていきます。
すると2回目、3回目は、落ち着くまでの時間もだんだん短くなっていくんですね。

――自分で気持ちを落ち着かせる経験を重ねることも大切ですね。

親野 そうそう。あと、親子でトランプやカルタをやるときは、たくさん負けてあげてもいいと思います。

子どもは勝つ経験を積むと心に余裕ができます。
「家ではいっぱい勝てているし、たまには負けてもいいかな」と思えるようになるんですね。

そういう経験も、負けを受け入れる力につながっていくと思います。

(本記事は『まいにちがたのしくなるおやくそく できるかな?』の発売を記念したオリジナル記事です)