
「おとう」と呼んでいい
夜、白無垢の前で、語り合う、りんと安。
結婚前に、親と子がこれまでを振り返るのはよくあるが、ここでは姉と妹。
思えば、りんは虎太郎とほのかな恋心を育んでいた。虎太郎の「奥様」というか、結婚して子どもを産んで「おっかあ」になることを夢見ていた素朴な時代もあったのだ。
「虎太郎にいさまのことは、もういいの?」と気にする安。
安のほうは「初めて恋をして。幸せで…」と満たされている。
「人間らしく幸せ」
これまでは誰かえらい人たちが決めたことに人生を規定されてきたが、いまは自分の意志で恋して結婚相手を選択できた。いまが一番幸せなときかもしれない。
「お姉様あの時、どんだけ辛かったんかなって。いまわかって」
そう、りんの場合は家のために意に沿わない結婚をして、酒浸りの夫と厳しい姑に苦労させられた。
でもりんは自分の運命を悲観していない。ちゃんと前を向いている。
「私の上がりはもう、きっと違う上がりがあるはず。そう思えるのはね、安がいてくれたから」
ふたりのやりとりを寝ながら聞いている美津(水野美紀)の表情も印象的だ。
娘ふたりを幸せにしたいのはやまやまだろう。だが、なかなかそうできなかった苦しみと、ようやくふたりが自立していく喜びとが混ざったような顔だった。
母と娘たちの関係に触れて、直美の心にも変化が。
祝言の日、直美は教会に行く。
吉江(原田泰造)に「結婚は家族のお祭り」「私には縁のない話だけど」と話しながら、りんの家族を見て「おっかさん」への思いが募ることを吐露する。
吉江「呼んでもいいですよ、おとうって」
直美「それは結構です」
感動場面になりそうで、ならない。『生理のおじさんとその娘』(23年)では原田と上坂は父子だったのに。
共演経験があるからか、吉江と直美のシーンはいつもしっくりくる。おもしろさも適切に伝わってくるうえ、おもしろさに隠された愛情がじわじわくる。脚本がもともといいのか、俳優がうまいのか。皆さん、どっちだと思いますか。







