「仕事ができる人」と「仕事ができない人」は、日ごろのなにげない口グセから違いがあります。たった一言でも、相手が動きやすくなる言葉もあれば、混乱させてしまう言葉もあるんです。その違いは何なのでしょうか? 3万人を分析して「仕事ができる人」になる絶対ルールをまとめた書籍『仕事ができる人の頭のなか』著者の木暮太一氏に伺いました。

「仕事ができない人」がよく言う口グセ・ワースト1Photo: Adobe Stock

できない人は「曖昧なこと」をよく言う

 仕事ができる人とできない人は、能力よりも先に「口グセ」が違う。ぼくは長年いろんなリーダーやメンバーと仕事をしてきて、そう感じるようになりました。

 恥ずかしい話ですが、ぼく自身、昔は典型的な「できない人の口グセ」を連発していました。

 メンバーが資料を持ってくると、「これじゃダメでしょ。もうちょっと相手に響くようにして」。

 アイデアを出してくれたら、「そういう感じじゃなくて、新しい目線を入れようよ」。

 一見ちゃんと指示しているようですが、言われた側は何をどう直せばいいのかさっぱりわかりません。当時のぼくは、ただの「曖昧なことしか言わないリーダー」でした。

 口グセは、その人の頭のなかをそのまま映します。だから、口グセを見れば、その人が仕事をどう捉えているかがだいたいわかってしまうのです。

データでも、口グセはバレている

 おもしろい調査を見つけました。「言われてもっともやる気が失せる上司の口グセ(上司構文)」のランキングです(ロバ耳編集部 2023年:https://www.moratame.net/wp/robamimi/202303_039/)。

 結果は以下でした。

7位 ちゃんと考えた? (4.8%)
6位 うちの会社はこういうものだから、しょうがない(10.3%)
5位 俺の若い頃は、こうだったのに…(10.6%)
4位 前にも言ったよね? (14.6%)
3位 そんなの常識でしょ? (15.3%)
2位 言っている意味わかる? (16.1%)
1位 やる気ある? (20.1%)

 ぼくがこのランキングを見て思うのは、上位の口グセに、はっきりした共通点がある、ということです。どれも相手を責めてはいるけれど、何をどうすればいいかは一切言っていません。

「やる気ある?」と言われても、じゃあ何をすればやる気があると認めてもらえるのかはわかりません。

「そんなの常識でしょ?」の常識も、人によって中身がバラバラです。

「ちゃんと考えた?」にいたっては、何をどう考えればよかったのかが最後までわからない。部下からすれば、「考えたに決まってるだろ」としかなりません。

 日本能率協会の調査でも、言われてイヤな一言の上位は「使えないな(33.8%)」「そんなこともできないのか?(32.6%)」でした。やっぱり、評価と感情をぶつけているだけで、行動の指示にはなっていません。部下のやる気を奪う口グセは、たいてい「曖昧なダメ出し」なのです。

ダメ出しだけじゃない。指示も曖昧

 曖昧なのはダメ出しだけではありません。指示そのものも曖昧なことが多いです。

「よしなにやっておいて」
「いい感じにしておいて」
「なんか違うんだよね」

 どれも、言っている本人は自分の考えを伝えたつもりで、指示したつもりでいます。でも、受け取る側からすると「で、結局どうすればいいの?」としかなりません。

 以前ぼくが一緒に仕事をしたリーダーは、何を聞いても名詞しか返ってこない人でした。

ぼく「次の企画はどの方向で進めましょう?」
リーダー「えーっと、新生活」
ぼく「対象は?」
リーダー「主婦」
ぼく「……」

 主婦向けに、新生活をテーマにする。そこまでは言葉になっています。でも、新生活の何に絞るのか、主婦がどんな場面で検討する商品なのかは、まったくわかりません。

 これでは、何度やり直しても相手の「正解」とズレ続けます。そして最後は「ちゃんと考えてないよね」とこちらのせいにされる。経験のある人も多いんじゃないでしょうか。

できる人は「相手が動ける言葉」を使う

 一方で、仕事ができる人の口グセは、聞いた相手がそのまま動ける言葉になっています。

「このゴールは◯◯です」
「具体的にいうと、こういうこと」
「つまり、君が言いたいのは~かな?」
「まずは、ここから手をつけよう」

 感情的なダメ出しをしていないことはもちろん、ポイントは、うまいことを言おうとしていないところです。かっこいい言い回しでも、心に残る名フレーズでもありません。ただ、相手が次に何をすればいいかが明確になる。それだけです。

「なんか違う」ではなく、「この資料で伝えたいのは◯◯だから、その文を頭に持ってきて」

「自分で考えて」ではなく、「ここは君に任せる。判断の基準はこの3つね」

 伝えている中身は同じようでいて、相手の動きはまったく変わります。

「言葉にした」と「伝わった」は違う

 ぼくがたくさんの失敗から学んだのは、言葉にしただけでは伝えたことにならない、ということです。

 日本語はもともと曖昧さを許す言語ですし、察してもらうことをよしとする文化もあります。それ自体は悪いことではありません。

 でも、仕事の現場で「察してね」を相手に強要するのは、コミュニケーションではありません。考える作業を押しつけているだけです。

 できる人は、自分の頭のなかを明確にできているからこそ、相手にも明確に伝えられます。自分でゴールとやるべきことがはっきり見えているから、それをわかりやすくそのまま渡せる。

 逆に、曖昧な言葉しか出てこないときは、たいてい自分自身もよくわかっていません。「いい感じにしといて」は、何が「いい感じ」なのかをその人自身がよくわかっていない証拠なのです。

「頭のなか」が変われば、口グセも変わる

 口先のテクニックで言い換えようとしても、たいていうまくいきません。

「やる気ある?」を禁止しても、頭のなかが曖昧なままなら、別の曖昧な言葉に変わるだけです。

 先に「自分は何を伝えたいのか」「相手に何をしてほしいのか」を、自分の中で明確にする。そこさえはっきりすれば、自分が発する言葉は自然と変わっていきます。

 仕事ができる人は、特別に話がうまいわけではありません。自分の頭のなかを、めんどくさがらずに言葉にしているだけです。今日からひとつでいいので、「いい感じで」と言いそうになった瞬間に、「具体的には?」と自分に問い返してみてください。その小さな習慣が、あなたの言葉と行動を変えていきます。

(本記事は、『仕事ができる人の頭のなか』に関連した書き下ろし記事です)