【大人の教養】ツタンカーメンの墓にもあった「海を越えた青」、その意外な産地とは?
「地図を読み解き、歴史を深読みしよう」
本連載では、海峡・山脈・河川などの地形を手がかりに、世界史を読み直していく。著者は代々木ゼミナールの世界史講師で、「地図の鬼」と呼ばれる伊藤敏氏。オリジナル地図を通じて、ホルムズ海峡やシルクロードなどの歴史的背景を立体的に理解でき、歴史と地理を同時に味わうことができる。本稿は、伊藤氏の近刊『地図で学ぶ「深読み」世界史』を一部抜粋したものだ。
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ツタンカーメンの墓にもあった「海を越えた青」、その意外な産地とは?
本日はアフガニスタンとラピスラズリについてお話しします。まずアフガニスタンの位置を確認しましょう。下図を見てください。
出典:地図で学ぶ「深読み」世界史
アフガニスタンは国土の大半を山岳地帯が占め、この山脈はヒンドゥークシュ山脈と呼ばれます。ヒンドゥークシュ山脈は長さ800kmにおよぶ大山脈で、アフガニスタンの中部から東部にかけて標高3000m以上の高山が連なり、東部では7000m級の山々も珍しくありません。
また、環境も乾燥した山肌が広がり、水資源も乏しいなど、人間の居住は比較的厳しいと言わざるを得ないものです。にもかかわらず、アフガニスタンは先史時代よりユーラシア諸地域と活発な交流を見せます。その理由がラピスラズリの産出です。
「海を越えた青」としてのウルトラマリン
ラピスラズリ(和名は「瑠璃(るり)」)はケイ酸塩鉱物(藍方石(らんぽうせき))を主成分とする鉱石で、鮮やかな青色を特徴とします。ラピスラズリはユーラシア各地で青色の顔料に用いられ、その顔料はウルトラマリンと呼ばれます。
ウルトラマリンUltramarineとはラテン語のultramarinusを語源とし、これは「海を越えたもの」を意味し、海上貿易によってヨーロッパにもたらされた故事に由来すると言います。ヨーロッパをはじめ、ユーラシア各地ではこのラピスラズリを原料とするウルトラマリンが青の着色に珍重されたのです。
バダフシャーンという唯一無二の産地
このラピスラズリの一大産地が、アフガニスタンにありました。今日のアフガニスタン北東部、バダフシャーン地方にラピス鉱脈があり、東南アジアのモルッカ諸島が香辛料の一大産地であったように、前近代ユーラシアのラピスラズリ採掘地は、ほぼこのバダフシャーン地方に限られていました。
このためユーラシア各地でのラピス製品やウルトラマリンを用いた物品は、これらの地域がアフガニスタンと何かしらの形で交易があったことを示唆するのです。古代のラピス製品は、インダス文明やメソポタミア文明をはじめ、イラン高原や中央アジア、さらにエジプトのトゥトアンクアメン(ツタンカーメン/位・前1335~前1327)の陵墓など各地の遺跡・遺構で発見されており、これらラピス製品の原石はバダフシャーン地方周辺の集落で加工され、各地に輸出されたものと考えられます。下図を見てください。古代のラピス鉱山と交易路になります。
出典:地図で学ぶ「深読み」世界史
現在でもバダフシャーン地方はラピスラズリの採掘が行われており、鉱山は国営で政府の統制下に置かれています。
(本原稿は『地図で学ぶ「深読み」世界史』を一部抜粋したものです)









