【依存の作り方2】時間を忘れさせる
「このような仕掛けでアプリを開かせることに成功したら、次はできるだけ長く見続けるように仕向けます。その達成の鍵は『時間を忘れさせること』です」
港くんはこちらについても、具体的な手法を説明しました。
①「やめるタイミング」を排除する
「ここで終わりにしよう」と、アプリを閉じるタイミングを徹底的に奪う。
たとえば動画が完全に終わる前に、次の動画を自動的に再生すれば、「何もしなければ惰性で見続ける」状況が生まれる。
②「予想できそうで、できない」状況をつくる
「予想できそうで、できない」ことは強い快楽をともなう(ギャンブルの本質)。
SNSでは投稿をスクロールするとき、「次はもっとおもしろいかも」と思う。毎回おもしろいコンテンツに出会えなくても、たまに「大当たり」があれば、それがまた次の期待となって「次はもっと……」と思わせる。
③無限に与え続ける
お酒やタバコは中毒性が強いが、買うのにはお金がかかり、消費すればなくなる。しかしSNSはいくら見ても無料で、コンテンツが尽きることはない。
定額の動画サービスも、一度入会すれば「いくら見ても追加料金がかからない」状況となり、同じはたらきをする。この「制限なく無限に見られる」性質は時間を忘れさせ、依存を深める。
◯
「――以上の計画にもとづき、次の5年でfluidは世界最大手の座につきます。私はこれを『目標』とは呼びません。このビジョンが現実のものとなることを、確信しています。fluidは今日ここにお集まりいただいた、世界最高のボードメンバーに恵まれているのですから」
各部門の役割と重要性を示した後、港くんは戦略会議を閉じました。
参加した各部門の責任者は、世界までのハッキリとした道筋と、その道を辿るのに自分が欠かせない存在であるという自負によって意欲にあふれ、足早にデスクにもどっていきます。
「……」
しかし港くんだけはそのまま1人会議室に残り、うつむいていました。ほんの数分前までの自信に満ちた表情が嘘のように、ひどく疲れて見えました。
※本記事は、『脱スマホ術――「何もせず1日が終わった」がなくなる』の一部を抜粋、再編集したものです。
※この物語は、フィクションであり、実在の人物や団体とは関係ありません。
戸田大介(とだ・だいすけ)
山形県出身。新卒で電通アイソバー(現・電通デジタル)に入社。データアナリストとして勤務したのち、bondavi株式会社を創業。データと行動科学の知見をもとに、人の前向きな行動を引き出すアプリの開発に取りくむ。全アプリを広告なし・無償で提供し、ユーザー任意の寄付により運営している。『継続する技術』『集中』は国内有数のヒットとなり、累計ダウンロード数は1000万を超える。著書『脱スマホ術』『継続する技術』。








