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なぜ靴やバッグの修理専門店では、受付の際に「他にも気になるところはありませんか?」と聞くのか?Photo: Adobe Stock

「修理に来た」だけなのに、
気づけば2点・3点を預けている理由

 お気に入りの靴底の修理を頼みに行ったとき、受付の店員から「かかと以外で、何か気になる部分はありますか?」と聞かれることがあります。

 すると、「そういえば、内側の革も少し傷んでいたな」「このバッグの金具もそろそろ気になっていたな」と、本来の用件以外のことまで思い出すことがあります。結果として、最初は1点だけのつもりだったのに、複数点をまとめて預けることになるケースもあります。

 この「他にも気になるところはありませんか?」という一言は、単なる丁寧な接客にとどまりません。

 お客様自身もはっきり意識していなかった「潜在的な修理ニーズ」を言葉にしてもらうことで、追加注文につながりやすくする接客上の工夫と考えられます。

「自分で言ったこと」だから納得しやすい

 店員がいきなり「このバッグの金具も修理したほうがいいですよ」と提案すると、お客様の中には「売り込まれている」と感じる人もいます。

 しかし、「他にも気になるところはありますか?」と問いかけられ、お客様自身が「そういえば金具も気になっていました」と口にした場合、その修理は「店員に勧められたもの」ではなく、「自分で必要だと気づいたもの」になります。

 人は、自分の言葉で出した理由や判断には納得しやすいものです。そのため、追加の見積もりや提案も受け入れやすくなります。これは、自己説得や一貫性の心理に近い働きと考えられます。

「ついで」という文脈が、心理的な負担を軽くする

 もう一つの理由は、複数の修理を「今回まとめて済ませる用件」として受け止めやすくなることです。

 靴底の修理だけで来店したお客様が、後日あらためてバッグの金具修理のために来店し、別に料金を払うとなると、心理的には「またお金がかかる」と感じやすくなります。

 しかし、同じタイミングでまとめて依頼すれば、「今日のメンテナンス費用」として一つの支出にまとめやすくなります。

 複数点の修理代を合算しても、「ついでに済ませられた」「一度で終わってよかった」という感覚があるため、単品ごとに支払うよりも心理的な抵抗が小さくなることがあります。

他のお店でも使える「潜在ニーズの言語化」設計

時計修理店
 オーバーホールの受付時に「ベルトや裏蓋で気になる部分はありますか?」と尋ね、ベルト交換やコーティングなどの追加メニューに気づいてもらう。

メガネ店
 レンズ交換の相談時に「フレームの調整や、他に見えにくさを感じる場面はありますか?」と聞き、サングラスや老眼鏡など、別用途の需要を引き出す。

自動車の整備工場
 車検の受付時に「最近、運転中に気になる音や振動はありますか?」と尋ね、本来の車検項目以外の整備ニーズをお客様自身の言葉で表面化させる。

まとめ

 修理専門店で「他に気になるところはありませんか?」と聞くことがあるのは、単なる接客マナーだけではありません。

・お客様自身に気になる箇所を言葉にしてもらうことで、追加修理への納得感を高める
・「ついでにまとめて済ませる」という文脈を作ることで、支払いへの心理的な抵抗を下げる
・潜在的に気になっていた箇所を顕在化させることで、自然な追加注文につなげる

 という、売り込まずに客単価を引き上げるための、シンプルで実践しやすい問いかけの設計なのです。

岡本達彦(おかもと・たつひこ)
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティングや心理学を使わず、
アンケートやマンダラ等を活用して、誰でも売れる広告を作れる手法を体系化する。
業界を問わず即効性が高く、お金をかけずに売上を上げられることから、全国の商工会議所・経済団体などからセミナー依頼が殺到する。
初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル』
『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』『「マンダラ広告作成法」で売れるコピー・広告が1時間でつくれる!』(以上、ダイヤモンド社)等がある。