どうすればお金をかけずに、売上や利益をもっと増やせるのか? この切実なお悩みに答えるのが、人気の販促コンサルタント・岡本達彦氏の最新刊『客単価アップ大事典 「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』(ダイヤモンド社刊)です。同書は、「行動経済学×現場目線」で「つい買いたくなる」販促の仕掛けとは何かを言語化した初の書。本書が提示するのは、「お客様の購買行動そのものを変える設計とは?」です。どうすれば、「利益が残る経営」へと変われるのか? 本連載では、『客単価アップ大事典』に収録しきれなかった事例の中から、現場ですぐに導入でき、成果につながりやすい客単価アップの仕掛けを厳選してご紹介していきます。
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「最初に見た部屋」が、
その後のすべての判断基準になる理由
不動産会社で「予算は3000万円くらいで」と伝えると、担当者が最初に案内するのは、なぜか予算の上限に近い、あるいはわずかに超えた物件だ。
「少し予算オーバーだけど、参考までに」と言われながら内見した部屋は広くて日当たりも良く、設備も充実していた。
その後に案内された予算内の物件を見るたびに、「さっきの部屋と比べると、ここは少し狭いな」「あちらのほうが収納が多かった」という感想が頭をよぎる。
最終的に成約した物件は、当初の予算より300万円ほど上だった。そんな経験、あるいは周囲で聞いたことはありませんか?
実はこの「高い物件から見せる」という順番は、担当者の趣味や偶然ではありません。
お客様の頭の中に「価値の基準点」を作ることで、その後の判断を自然に上位物件へと誘導する、精密に設計された販促の仕掛けなのです。
「最初に見たもの」がすべての比較軸になる
(アンカリング効果)
人は、最初に提示された情報を「基準点(アンカー)」として、その後のすべての判断をそこからの差異で評価する傾向があります。これを「アンカリング効果」といいます。
最初に広くて設備の良い高額物件を見ると、その物件のスペックが脳内の「普通の基準」として刻み込まれます。その後に予算内の物件を見ても、「これが適正価格の部屋だ」とは評価されず、「最初の部屋と比べると劣っている」という差分で評価されてしまうのです。
逆に、予算内の物件から見始めれば、それが基準となり、同じ高額物件を見ても「これは予算を超えているな」という判断になりやすい。
見せる順番を変えるだけで、お客様の価値評価の物差しが丸ごと変わるのです。
「一度体験した良さ」は手放しにくい
(心理的所有感とコントラスト効果)
もう一つの理由は、高額物件を実際に体験することで生まれる「心理的所有感」です。
広いリビングに立ち、「ここにソファを置いたら」「あの窓からの眺めで朝食を食べたら」と想像した瞬間、その空間は「自分のもの」として一時的に脳に刻まれます(心理的所有感)。
この感覚を一度持つと、それより条件が劣る物件を見るたびに「何かが足りない」という不満が積み重なります。
これは「コントラスト効果」とも連動します。高い基準を先に見せることで、その後に見る物件との「差」が際立ち、予算内物件の弱点ばかりが目につくようになる。
最終的に「少し無理をしてでも、最初に見たあの部屋に近いものを選びたい」という方向に、意思決定が動いていくのです。
他のお店でも使える「上位から見せる」設計
・注文住宅・リフォーム
打ち合わせの冒頭に、予算上限をやや超えた施工事例の写真や動画を「こういった仕上がりのイメージです」と見せる。その後に予算内プランを提案すると、「少し足せばあの仕上がりに近づく」という動機が自然に生まれる。
・旅行代理店
希望予算を聞いた後、まず「こちらが特に人気のプランです」と言いながら予算より一ランク上のツアーを見せる。リゾートホテルやビジネスクラスの体験を視覚で想像させてからエコノミープランを見せると、差額が「贅沢」ではなく「妥当な投資」に感じられやすくなる。
・車のディーラー
試乗を案内する際、まず上位グレードに乗ってもらう。静粛性・加速感・内装の質感を身体で体験した後に標準グレードを試乗すると、差額が「数字」ではなく「体感した価値の差」として認識され、上位グレードへのアップグレードが起きやすくなる。
まとめ
不動産会社が一番高い物件から内見させるのは、単に「良い物件を見せたい」からではありません。
・「アンカリング効果」により、最初に見た高額物件のスペックをお客様の脳内の「普通の基準」として刻み込み
・「心理的所有感」により、良い物件を体験した記憶が「あの部屋が欲しい」という手放しにくい感覚を生み
・「コントラスト効果」により、その後に見る予算内物件の弱点が際立ち、上位物件への予算追加を「妥当な判断」として受け入れさせる
という、内見の順番を設計するだけでお客様の価値判断の物差しを丸ごと変える、精密な販促戦略なのです。
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティングや心理学を使わず、
アンケートやマンダラ等を活用して、誰でも売れる広告を作れる手法を体系化する。
業界を問わず即効性が高く、お金をかけずに売上を上げられることから、全国の商工会議所・経済団体などからセミナー依頼が殺到する。
初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル』
『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』『「マンダラ広告作成法」で売れるコピー・広告が1時間でつくれる!』(以上、ダイヤモンド社)等がある。




