着服があったわけでもなく、管理がずさんだったわけでもない。淡々と積み立ててきたにもかかわらず、自然に足りなくなる――そういうケースが急増している。

 もちろん、管理組合の人的な問題が重なって不足を深刻化させるケースもあるが、それは別の話だ。構造的な問題として、まじめに積み立てても足りなくなるという現実がある。

月3万円の修繕積立金が
9万円になったケースも

 修繕積立金が足りなければ、管理組合は銀行から借入をすることになる。するとこれが、別の問題を引き起こす。

 中古マンションを売買する際、仲介業者は管理会社から「重要事項調査報告書」という書類を取り寄せる。この書類には修繕積立金の状況や管理組合の借入の有無などが記載されており、マンションの管理状態を示す「通信簿」ともいえる内容だ。

 買主が住宅ローンを申請する際、銀行はこの書類をもとに審査を行う。そこに借入が記載されていると、銀行はそのマンションの管理状態に問題があると判断し、住宅ローンの審査を厳しく見る傾向がある。

 審査が厳しくなれば、融資を受けられる買い手の数が減る。買い手が減れば競争が起きにくくなり、価格は下がる。つまり修繕積立金の不足は、マンションを売りたいオーナーには売値の下落として、現在住み続けているオーナーには保有資産の価値の毀損として、直接はね返ってくるのだ。

 さらに言えば、修繕積立金の上昇はすべてのマンションに訪れる宿命でもある。まともな管理会社がついているマンションであれば、長期修繕計画が必ず存在し、おおむね5~6年ごとに修繕積立金が上がるように計算されている。

「修繕積立金の上昇は、マンションの価値の下落」と私は言い切る。修繕積立金が上がればキャッシュフローが悪化し、融資が組みにくくなって価格を下げる方向に働く――この構造は、すべてのマンションに等しく訪れる。

 こうして「来月から修繕積立金が上がります」という通知が、ある日突然届く。タワーマンションでは、月3万円だった修繕積立金が一気に9万円になった事例もある。住民はそれをコントロールできないまま、資産価値が少しずつ削られていく。