問題は、建て直しにかかるコストだ。たとえば新潟の郊外と東京・代々木の駅近とでは、建物の建築費はほとんど変わらない。一方、家賃は5倍から10倍違う。同じ金額をかけて建てても、立地によって収益性が大きく変わる。地方の家を建て直して賃貸に出しても、半年も借り手がつかなければ赤字になる、というのは珍しい話ではない。

 だとすれば「売る」しかないのか。ところがそこにも、大きな壁がある。

家を売ろうにも
解体費用が立ちはだかる

 空き家を相続した人の多くは、売却を考える。だが実際に動き出すと、「解体費用」という想定外の出費が立ちはだかる。

 私が以前、動画で取材した案件がある。九州地方の古い一軒家で、草が絡まり、樹木に覆われた様子を見ると「ジブリの映画に出てきそう」と言いたくなるような物件だ。しかし、屋根には大きな穴が開き、家の内部が雨ざらしになっていた。地元の不動産会社数社に査定を依頼したところ、全員に断られたという。

 私が現地で見たところでは、解体費用だけで300万円前後はかかるだろうと思われた。残置物の処理を含めれば400万円を超える可能性がある。一方、更地にして売った場合、せいぜい150万円程度だろう。解体して売っても、300万円前後のマイナスになる計算だ。しかも、先に解体費用を払って行う必要があり、その後に売却で運が良ければ一部回収という図式も事を難しくしている。

 さらに厄介な問題があった。この家の元々の持ち主は陶芸家で、工房には釉薬をはじめとする各種薬品が残されていた。釉薬の中には劇物指定を受けているものも含まれており、たとえ土壌に実際の染み込みがなかったとしても、そうした薬品が敷地内で使用されていた記録が残っていれば、法律上「土壌汚染の可能性がある土地」として扱われるケースがある。

 そうなると、売却前に土壌調査レポートの提出を求められる可能性が生じ、調査費用がさらに上乗せされる。

 加えて、土壌汚染の「可能性がある」というだけで土地の評価額が下がり、買い手がつきにくくなる。解体費用の問題だけでも十分に厳しいのに、この物件にはそうした特殊なリスクが重なっていた。

「解体したら逆ざやになる」という構造は、この物件に限らない。田舎の大きな家では、解体費用400万円~500万円、あるいはそれ以上にのぼることもある。