お盆や年末年始の帰省シーズン、親や兄弟姉妹と久々の一家だんらんを楽しみつつも、「この先、親の住む実家をどうしよう?」という悩みが、ふと頭をよぎることはないでしょうか。特に近年では空き家の増加を食い止めるために、法律や制度の改正が行われています。何の対策も打たないでいると、住まない実家は思わぬ「金食い虫」になってしまう可能性があるのです。そこで今回は、税理士法人レガシィの著書『【最新版】やってはいけない「実家」の相続』(青春出版社刊)から、今から考えておきたい「実家じまい」のヒントを紹介します。
「住まない実家」の維持には費用と手間がかかる
実家の相続は一筋繩ではいきません。もちろん、親と同居をしていた子が、亡くなった親の家と土地を相続して引き続き住むというなら話は別です。しかし、今の世の中、そうした幸せなケースはむしろ少数派といってよいでしょう。
親とは別居していて、すでに別の場所にマイホームを持っていると、相続した実家の扱いは厄介です。誰も住まなくなった実家を維持管理しなければならないからです。それが遠距離にある場合はなおさらです。
「住まない実家」は費用と手間というコストがかかります。
「費用」は、固定資産税の支払いはもちろん、火災保険も解約するわけにはいきません。
また、人が住まない家はすぐに荒れてしまいます。きれいに保とうとするならば、ときどき訪れては窓を開けて換気したり、雑草をとったりしなければなりませんが、実家が遠距離にあると交通費もばかになりません。例えば、東京に住んでいて地方に実家があるという人は、新幹線や飛行機代がかかります。マイカーで往復するにも大変でしょうし、近くに公共交通機関がなければ、レンタカーを借りる費用もかかります。
時間もかかります。国土交通省が、空き家を所有している3912人を対象にして行った調査によれば、空き家から自宅まで車や鉄道で1時間超かかると答えた人が全体の28.2%。うち3時間超の人も12.5%いました(国土交通省「令和元年空き家所有者実態調査」より)。
また、空き家だからといって、電気や水道をすぐに切るわけにもいきません。実家に帰れば、トイレを使いますし、冷暖房も必要です。