更地にすると多額の税金
放置すれば維持費は数百万円
築古の建物には、アスベストの問題も絡んでくる。アスベストは、かつて「夢の建材」として壁紙の接着剤や巾木の下地などに広く使われており、一定の年代以前に建てられた古い家にはほぼ含まれていると思ったほうがいい。
現在は解体前にアスベストの有無を検査することが義務付けられており、検査費用に加え、アスベストが検出されれば専門業者による除去費用が別途かかる。検査なしに解体を強行すれば違法となる。
それ以外にも、樹木の伐採、門柱や塀などの外構撤去、庭石の撤去──これらが積み重なり、「解体して更地にするとマイナスになる」という逆ざや構造が生まれる。
さらには、固定資産税の問題もある。土地の上に建物が建っていると、住宅用地の特例が適用され、固定資産税が最大6分の1に軽減される。ところが建物を解体して更地にすると、この特例が外れ、翌年から税額が一気に跳ね上がる。「壊せば税金が高くなる、壊さなければ建物が朽ちていく」というジレンマに、多くの相続人が追い込まれる。
では、そのまま放置するとどうなるか。近隣からは苦情が来る。「木が道路に覆いかぶさっている」「屋根の瓦が落下しそうだ」という声が届くようになると、伐採費用や応急処置費用がさらに積み上がっていく。
とある九州の物件でも、動画撮影をきっかけに親族会議が開かれ、まず庭木の伐採に17万円。続いて室内の清掃見積もり、そして解体費用の確保へと、出費の連鎖が始まった。
「ちょっとした費用」が積み重なり、気づけば数百万円規模の話になっている──これが放置された空き家の現実だ。
地方の空き家は
豪邸でも「負動産」になる
こうした地方の空き家の現実を、他のケースでも目にしている。熊本県八代市に、2年間空き家になったまま売りに出されている物件があると聞き、現地を訪ねた際のことだ。
敷地に足を踏み入れた瞬間、庭は草が腰の高さまで伸び、巨大な蜘蛛が何十匹も巣を張っていた。窓を開ければ蚊の大群が押し寄せる。人が住まなくなったわずか2年間で、建物の周囲はすでに自然に飲み込まれ始めていた。







