東芝本社ビルPhoto:PIXTA

東芝の上場廃止と日立の躍進。かつて「総合電機の双璧」と呼ばれた両社の現在地は大きく異なる。その背景には、日本企業が長年苦手としてきた「会社を値段で考える発想」があるという。なぜ同じ業界の大企業でこれほど差がついたのか。※本稿は、グロービス経営大学院教員の森生 明『会社の値段[新版]』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。

経営危機に瀕した東芝
対照的だった日立

 会社の上場とM&Aに対する日本企業の認識の違いが会社の命運を左右した意味で、東芝と日立という日本を代表する大企業の事例は象徴的でした。

 米国ウエスチングハウス社の買収失敗等から経営危機に瀕した東芝は、上場会社というステータスに拘り、債務超過による上場廃止を免れるために外資系ファンドからの出資を招き入れました。しかし、その外資系ファンドらによって、経営陣は退陣を求められ、さまざまな事業を売却し、最後は会社そのものが競売にかけられる形で日本産業パートナーズというファンドに買い取られ上場廃止になりました。

 この事例は上場会社が増資により資金調達することと会社自体を売却するM&Aが本質的に違わない、という基本認識が東芝経営陣に欠けていたことを示す出来事でした。

 これと対照的な動き方をしたのが同業ライバルの日立製作所でした。日立が初めて海外で行った大型買収は2002年のIBMハードディスク事業でしたが、統合後の経営に苦労し赤字が続き、日立にとり重荷になっていました。

 これを立て直した中西宏明氏はその功績もあり、日立製作所の社長に抜擢されるのですが、就任後に最初に中西社長が行ったことのひとつが、自身が黒字化させたハードディスク事業の売却でした。