事例で読み解く!経営・ビジネスの深層Photo:NurPhoto/gettyimages

2015年に発生した不正会計問題以降、深刻な経営難に陥った東芝。社債市場でも、東芝社債が暴落するなど話題を集めたが、その機をつかんでもうけを手にしたのが海外ヘッジファンドだった。連載『事例で読み解く!経営・ビジネスの深層』では、前編後編にわたり東芝を巡る当時の海外ファンドの動向を解説していこう。後編となる本稿では、いよいよ東芝の危機に際し、海外勢がどのような点に注目したのかを明らかにしていく。実は、倒産さえ危ぶまれた東芝だが、海外勢からするとその社債は「絶対にもうかる」投資に見えていた。その理由とは。(フジワラキャピタル代表取締役社長 土屋剛俊)

ジャンク債となった東芝社債
国内勢は手放し海外勢が投資した理由

 前編(『「もはやジャンク債…」東芝社債大暴落で海外ヘッジファンドが“濡れ手で粟”の裏側、背景となる債券メカニズムの基本を解説』)では、社債市場で起きた東芝の事例についての理解を深めるため、債券の価格変動の基本メカニズムについて解説した。

 改めてであるが、名門企業・東芝の社債が売り込まれ始めたのは、不正会計問題が発覚し、コーポレートガバナンスの悪化や信頼性低下を理由に格下げがされた2015年ぐらいの時期である。特に、16年末に原子力事業で「数千億円」規模の減損が発生する見込みが公表されると、株価が大きく下落し、翌年に米ウエスチングハウスが連邦破産法11条の適用を申請したことで、のれんの減損額は7000億円を超えた。巨額の債務超過に陥るなど、財務状況は惨憺たる状態となってしまった。

 それに伴って、格付けも大きく引き下げられた。外資系の格付け会社はいずれも「投資不適格」「投機的格付け」の水準となり、東芝の社債はいわゆる“ジャンク債”となってしまったのである。

17年5月時点の格付け
米ムーディーズ Caa1
米S&P CCC-

 米国の格付け会社に比べて相対的に評価が高い日本の格付け会社でも、BBレンジという極めて低い格付けまで引き下げられている。日本ではBBの格付けが付与されることは非常に珍しく、格付けを見る限りにおいては“いつ倒産しても全くおかしくない”という状況になっていた。

 以前の楽天グループの社債の事例(『「どん底の楽天社債」を国内投資家が見放し海外投資家は買い漁った理由、儲けのチャンスを逃す日本人の“致命的欠点”』参照)でも説明したが、こうした状態となると損失を極端に嫌う“サラリーマン投資家”である本邦金融機関は、保有している社債を売却せざるを得なくなる。

 一方で、その隙を縫って“巨額の利益”を手にしたのが海外ヘッジファンドだった。経営危機に直面し、倒産さえ危ぶまれた東芝の社債に、海外ヘッジファンドは大胆にも投資を行ったが、実は彼らにしてみれば、東芝への投資は“無謀な賭け”ではなく、“損のしようがない”極めてお得な投資に映っていたのである。

 当時の海外ヘッジファンドが何を考え、どんな行動を取ったのか。その詳細を解説していこう。