本人も、本心で「いつお迎えが……」と言っているわけではないと思う。だが、そうした言葉が口からついて出るのは、若い頃のように身体を動かせなくなり、できないことが増えていく自分に苛立ち、もどかしく感じているからだろう。
生まれたばかりの子どもは、毎日、新しくできることがひとつひとつ増えていく。だが、老いていく過程では、できないことがひとつひとつ増えていく。
「あんなにお料理が好きだったのに、凝った料理ができなくなった」
「足が痛くてしゃがめないから、拭き掃除ができなくなった」
「昔は2駅先まで歩いていたのに、ひとりではどこにも行かれなくなった」
できなくなったことを数えると、きりがない。
でも、できることも、まだまだたくさんある。
「自分でごはんを作って、自分で食べられる」
「モップを使って、床の掃除ができる」
「杖をついて歩くことができる」
できなくなったことを数えるのではなく、今できることを数えて生きていけばいいじゃないか。今は「一包化」しなくても、自分で薬の管理ができている。だから、娘はハルコを褒めまくる。
娘 「お母さん、よく薬の名前覚えてるね、高齢になると自分で薬が飲めなくなる人もいるのに、お母さんは自分で管理できてスゴイ。医療費も節約できるし!」
ハルコ 「当り前よ。自分が飲む薬くらい、自分で分かるわよ」
興味なさそうに返事をするが、その実、まんざらでもなさそうだ。鼻の穴が膨らんでいるのがその証拠だ。
あっぱれ!ハルコ91歳、本日も介護未満。娘の見守りは続く。








