国外の違反者にも
法的責任を追及する

 この法律の重要なポイントを見ていこう。まずこの法律は「中華民族共同体意識」の形成を教育、文化、企業活動、メディアなど社会全体を通じて推進するための基本法という性格が強い。

 第1条は立法目的として「中華民族共同体意識を確固たるものとし、中華民族共同体の建設を推進し、中華民族の偉大な復興を実現すること」を掲げ、第2条では中国共産党の指導と習近平思想を民族団結事業の基本原則として明記している。

 また、第6条は「民族団結の破壊」や「民族分裂」を禁止し、第58条では違反した場合、当局が是正命令や行政処分を行い、治安管理違反に当たれば行政処罰、犯罪を構成すれば刑事責任を追及すると定める。

 さらに第10条では民族団結事業は「外部勢力の干渉を受けない」と規定し、人権や宗教などを理由に中国へ圧力を加える行為に反対するとした。

 そしてこの法律が大きな問題を引き起こす可能性があるのが第63条だ。この条文では、中国国外の組織や個人が民族団結を破壊し民族分裂を引き起こした場合にも、法に基づき法的責任を追及すると規定しており、国外も視野に入れた運用が想定されている。

 6月24日に中国司法省の胡衛列次官は、国外の違反者も対象とする第63条について、「国際慣行に合致した正当かつ合法で、必要かつ実現可能な法的規定だ」と述べている。

利益が出ても投資は増えない
企業は何を感じ取っているのか

 商業的な現実を確認しよう。

 近年、中国では反外国制裁法やサプライチェーン安全保障関連規定の整備が進み、外国企業が事業を縮小・移転する際の政治的コストは確実に高まっている。民族団結法もまた、その流れの延長線上に位置づけることができる。

 だが重要なのは法律の条文そのものではない。数字を見ると、現場の空気感が伝わってくる。米中ビジネス協議会(USCBC)が2026年に発表した調査によれば、在中国の米国企業の92%が2025年に黒字を確保した。これはコロナ禍後で最高の水準である。