「やりたいことを見つけなさい」と言われる一方で、「一つに決めなければいけない」と思い込み、かえって動けなくなる人がいます。しかし、本当に大切なのは「一つの仕事」を見つけることではないのかもしれません。『世界の果てのカフェ』には、その思い込みをやさしく解いてくれる一節があります。「何度読んでもハッとする」と話題の一冊から、相談者に響いた名言について紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「やりたいことが多すぎて、1つに絞れません」。そんな悩みに効く名言・ベスト1Photo: Adobe Stock

やりたいことが多すぎて絞れない

 最近、こんな相談があった。

「33歳です。人を助けることは好きなのですが、教師にも興味がありますし、カウンセラーにも興味があります。福祉の仕事もしたいし、文章を書くことも好きです。やりたいことが多すぎて決められません。どれか一つに絞らなければいけないのでしょうか」

 相談者は、とても真面目な人だった。

「やりたいことは一つだけあるはず」

 そう思っているからこそ、選べない自分に焦りを感じていた。
 私はこの相談を聞いて、『世界の果てのカフェ』という本の一節を思い出した。

「何をやるか」よりも「なぜやるか」

 本書では、ケイシーがジョンに問いかける。

「もし、すきま時間に創作活動をするとしたら、どんな作品をつくる?」

 するとジョンは、こう答える。

「どんなアーティストになりたいかによるんじゃないかな。好きなものをつくる、それだけだよ。なぜここにいるかがわかれば、人はその理由を満たすためにやりたいことをすればいい、ってこと?」
――『世界の果てのカフェ』より

 このやり取りを読んで、私は大切なことに気づかされた。
 多くの人は、「何をやるか」ばかり考えている。
 教師になるのか。カウンセラーになるのか。福祉の仕事をするのか。

 でも、本当に考えるべきなのは、その前にある「なぜ、それをやりたいのか」なのである

手段は一つである必要はない

 さらにジョンは、こんな疑問を口にする。

「もし、ぼくがここにいる理由が人を助けるためだとしたら、ぼくの『人助け』の定義に合う限り、なんでも好きなことをやればいいのか……?」

 それに対してケイシーは、はっきりと答える。

「そのとおりよ」

 医療従事者になってもいい。
 貧困地域にシェルターを建ててもいい。
 会計士として税金の整理を手伝ってもいい。
 どれも、「人を助ける」という存在理由を満たす方法なのだ

 この考え方は、とても自由だ。
 存在理由は一つでも、それを実現する方法は一つとは限らない

 だから、「教師かカウンセラーか」という二者択一で悩む必要はない。
 どちらも、自分が大切にしている価値観につながっているなら、どちらを選んでもいいのである。

「やりたいこと」は一本の幹

 相談者に私はこう伝えた。

「やりたいことを一つに絞る必要はありません。まずは、それらに共通する『なぜ』を見つけてください」

 人を育てたい。誰かの力になりたい。安心できる場所をつくりたい。
 その「なぜ」が見つかれば、仕事の選択肢は一気に広がる

 教師も、カウンセラーも、福祉も、文章を書くことも、そのすべてが同じ方向へ向かう道になる。

世界の果てのカフェ』が教えてくれるのは、「やりたいことは一つ」という考え方ではない。
 一つの存在理由から、たくさんの「やりたいこと」が生まれてもいいということだ。

 だから、「どれを選ぶか」で立ち止まる必要はない。
 まずは、自分が何を大切にして生きたいのか
 その一本の幹を見つければ、枝葉は自然と広がっていくのである。

(本稿は、『世界の果てのカフェ』の発売を記念したオリジナル記事です)