エジソン、ジョブズもバカだった

 わたしはアメリカの大学に勤務していた経験もありますが、世界に出てつくづく実感するのは「日本人はまじめだなあ」ということです。朝から晩までまじめに働いて、上司の命令をまじめに守り、人っ子ひとりいない深夜の横断歩道でもまじめに交通ルールを守っている。これは日本人の大きな長所であり、日本という国を世界に冠たる経済大国に押し上げた最大の原動力だと思いますし、現に、世界から尊敬されています。

 しかし、まじめが有り余っている日本にあって、圧倒的に不足しているのが「バカ」の人材です。ここでの「バカ」とは、学力の話ではありません。どれだけバカバカしいことを考え、それを実行に移すことができるか。

 つまり、周囲の批判や嘲笑を気にすることなく、まったく新しい発想を提言することができるか。しかも口先だけで大きなことを語るのではなく、その実現のために自らの足を踏み出すことができるか。そうした人のことを、わたしは最大級の敬意を込めて「バカ」と呼びたいと思います。

 世間の常識に背を向け、新しいことをやろうとすると、人は決まって「あいつはバカだ」と笑います。エジソンだってライト兄弟だって、あるいはスティーブ・ジョブズだって、みんな最初はバカなやつだと笑われたはずです。また、大企業からベンチャー企業に転職しようとするときも、「どうしてそんなバカなことを?」と反対する人は多いでしょう。