医用ロボットというジャンルをつくり出した東大名物教授は、なぜ、「世界初」を次々に生み出し続けられるのか?その思考と発想には「バカ」というキーワードが隠されていた!そこそこどまりで終わらない・その他大勢から突き抜ける自分になれる、新しい思考のルールを初公開!
バカの力が日本を救う
みなさんはじめまして。
東京大学大学院教授の、生田幸士です。わたしの専門はロボット工学。しかも鉄腕アトムやガンダムのようなヒト型ロボットではなく、工場で自動車を組み立てるような産業用ロボットでもなく、医療分野で活躍する医用ロボットをつくっています。
これまでわたしは、さまざまなロボットを開発してきました。いちばん最初につくったのは、ヘビのような形をした、くねくねと動くロボット内視鏡です。その後も、光によって動くナノレベル(1ナノメートル=10億分の1メートル)の医用ロボットなど、さまざまな「世界初」のロボットをつくってきました。もっと正直にいうなら、「医用ロボット」というジャンル自体をつくり、そして大きくしたのもわたしと言えるでしょう。ありがたいことに2010年には紫綬褒章までいただくことになりました。
しかし、わたしの研究は最初から高い評価を受けたわけではありません。むしろ最初のころは学会での評判も散々で、みんなからバカにされました。
「ロボットで医療をする? SF映画の見過ぎじゃないの?」
「医者でもない工学の人間が、医療だって?」
「夢物語はいいから、もっと地に足の着いた研究をしなさい」
さらにいうなら、学生時代のわたしは優等生だったわけではありません。たとえば大学受験のときも、第一志望の学科には点数が足りず、当時かなり不人気だった学科(金属材料工学科)で学ぶことになりました。率直なところ、いまわたしの研究室で学んでいる東大生たちは、受験と言う側面だけ見れば学生当時のわたしよりもはるかに優秀です。
そんな彼らに対して、わたしは口を酸っぱくして言っています。
「もっとバカにならなアカンよ!」
「いくらまじめに研究やってても、どこかで壁にぶつかるよ。その壁を突破するには、バカになるしかないんよ」
言葉で説明するだけではありません。東大生たちにバカになってもらうため、わたしは毎年「バカゼミ」という特別講義を開講し、思いっきりバカバカしい研究テーマに取り組んでもらっています。最近ではちょっとした東大名物となってきました。