「人前に立つと頭が真っ白になる」「言いたいことはあるのに言葉が出てこない」。そんな経験はありませんか。『言語化だけじゃ伝わんない』では、その原因は知識不足ではなく、「文章」という仕組みにあると語られています。本記事では、その意外な理由を紹介します。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

人前で話していると「頭が真っ白になってしまう」驚きの理由

頭が真っ白になってしまう理由

「頭の中では考えていたのに、話し始めた瞬間に真っ白になる」

 プレゼンや面接、人前でのスピーチで、そんな経験をしたことがある人は多いでしょう。
 すると、「自分は話すのが苦手なんだ」「もっと話し方を勉強しなければ」と考えてしまいます。

 しかし、『言語化だけじゃ伝わんない』という本では、その原因は別のところにあると語られています。

知っていることでも話せない理由

 本書では、こんな問いが投げかけられます。

「知っていることしか話せない」と言うと、すぐに疑問が浮かびます。
よく知っていることでも、話せないことがあるからです。
ここで、みなさんにひとつ質問です。
「あなたは、なぜ今の職業に就いたのですか?」
給料がいいから。その仕事が好きだから。なんとなく向いていると思ったから……。
いろいろな答えが思いつくはずです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 これは、自分自身のことです。
 知らないはずがありません。

 それでも、突然聞かれると、「えーっと……」と考え込んでしまうことがあります。
 話せない原因は、知識不足ではないのです。

頭の中には「答え」が多すぎる

 では、なぜ言葉が止まってしまうのでしょうか。
 本書では、その理由をこう説明しています。

文章は、言葉を一列に並べる必要があります。
でも、思いついた答えは複数ある。
口下手な人は、それを言葉にするときに迷ってしまう。
だから、「何から伝えればいいのか、わからないまま時が流れてしまう」のです。
混雑している駅のホームからエスカレーターに乗ろうとしたら、エスカレーター待ちの長い行列ができていることがあります。
でも、よく見るとエスカレーターの片側はガラガラに空いている。
二列で乗れば行列は早く解消するのに、一列だから渋滞が起きてしまうのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 この「エスカレーター」のたとえは、とてもわかりやすいものです。
 頭の中では、「好きだから」「給料がよかったから」「人に勧められたから」など、いくつもの答えが同時に浮かんでいます。

 しかし、口から出せる言葉は一列です
 どれを最初に言えばいいのか迷っているうちに、沈黙が生まれてしまいます。

頭の中は同時進行、言葉は一列

 本書では最後にこうまとめています。

私たちが頭の中を文章にするときも、これと似たようなことが起きています。
「言葉を一列に並べなければいけない」という文章の制約のせいで、考えをまるっと伝えることができなくなっているのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 頭の中では、複数の考えが同時に存在しています。
 でも、文章や会話は、一文ずつ、一列にしか並べられません

 つまり、「頭が真っ白になる」のではなく、「どの列から並べ始めるか」で渋滞が起きているのです。

「話せない」のではなく、「順番に迷っている」

言語化だけじゃ伝わんない』は、口下手の正体を新しい視点で教えてくれます。

 人前で言葉が止まるのは、頭の中が空っぽだからではありません。
 むしろ、その逆です。

 伝えたいことがたくさんあるからこそ、最初の一言を選べなくなってしまうのです
 だから、「頭が真っ白になった」と感じたら、自分を責める必要はありません。

 まずは、思いついたことを一つだけ話してみる
 すると、その一言が次の言葉を呼び、渋滞していた頭の中が少しずつ流れ始めます。

 話し上手な人とは、最初から全部を整理できている人ではありません。
 たくさんある考えの中から、「まずはこれ」と一つを選んで話し始められる人なのです。

(本記事は、書籍『言語化だけじゃ伝わんない –––– 絵を描くように「考える・伝える」技術』を元にしたオリジナル記事です。)

ヤギワタル
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない –––– 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。