「何を話せば正解なんだろう」「変なことを言って嫌われたくない」。そんな不安から、言葉が出なくなった経験はありませんか。『言語化だけじゃ伝わんない』では、その原因を「テスト感」という言葉で説明しています。人との会話が苦しくなる理由を紹介します。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

知らず知らずに「相手を不快にする人」
初対面の人と話すとき。
会議で発言するとき。
上司や取引先の前で話すとき。
「この言い方で合っているかな?」
「変なことを言っていないかな?」
そんな不安で言葉が止まってしまうことがあります。
『言語化だけじゃ伝わんない』という本では、この状態を生み出す原因は、「テストを受けている感覚」にあると語られています。
会話が「テスト」になってしまう
本書では、まずこんな体験が紹介されています。
「この答えで合っているのだろうか?」と考えて書く手が止まる。
迷っているうちに時間がなくなる。
慌てて解答欄を埋めて、なんとか点を稼ごうとする。
焦ったり悩んだり、思い出せずに困ったり、嫌なことばかりです。
似たような感覚を、私はコミュニケーションにも感じることがあります。
頭の中で思っていることを、「言葉にしてしまって大丈夫だろうか?」と考えてしまうのです。
なぜか、間違ったことを言いたくない気持ちになる。
相手にバカだと思われたくない感情です。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
この感覚は、多くの人に心当たりがあるでしょう。
本当は話したいことがある。
でも、「間違っていたらどうしよう」と考えた瞬間、口が重くなります。
相手に評価されると思うと苦しくなる
本書では続いて、こう語られています。
こうしてコミュニケーションは「テスト」に形を変えます。
相手にどう思われるかを気にしてしまう状態です。
「これを言ったら、相手になんて思われるだろう?」と気になるのは、その発言によって自分が評価されると思っているからです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
つまり、言葉が出なくなる原因は、語彙力不足ではありません。
「正解を言わなければならない」と思ってしまうことです。
会話なのに、いつの間にか試験問題を解いているような気持ちになってしまう。
だから自然に話せなくなるのです。
無意識に相手を「採点」している
さらに本書では、人間のこんな一面にも触れています。
初対面の人と話をするとき、相手がどんな人かを無意識に探っています。
そしてあとから、「あの人はいい人だ」「面白い人だ」と噂話をしていきます。
人は昔から噂話が大好きです。
噂話をするからこそ、信頼でき、仲間になれる人を見つけられる。
そして、噂話をするためには、他人を「テスト」する必要があります。
議論や討論の様子を見ているとき。
私たちはそこで話している人を評価します。
質問に答えられず黙り込んだ人がいれば、「論破された」「頼りない」と判定を下す。
テストされている感覚、略して「テスト感」は、コミュニケーションするときの私たちに、緊張や不安をもたらします。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
私たちは、自分だけが評価されていると思いがちです。
でも実際には、自分も相手を見ています。
「あの人は話がうまい」
「頼りになりそう」
「ちょっと苦手かも」
そんなふうに、お互いが無意識に評価し合っています。
だからこそ、会話は「試験」のような空気をまとってしまうのです。
相手を「採点」すると、会話は苦しくなる
『言語化だけじゃ伝わんない』は、コミュニケーションの落とし穴を教えてくれます。
話すのが苦手な人ほど、「相手にどう思われるか」を気にしています。
そして、その裏側では、自分自身も相手を評価しています。
この「テスト感」があるかぎり、会話はどこかぎこちなくなります。
だから、人を不快にしてしまう人は、知らず知らずのうちに相手を試すような質問をしたり、正解を求めるような話し方をしてしまうのです。
会話はテストではありません。
相手を採点する場でも、自分が採点される場でもありません。
その意識を持つだけで、「正しい答え」を探す会話から、「お互いを知るため」の会話へと変わっていくのです。
(本記事は、書籍『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』を元にしたオリジナル記事です。)
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。








