「なんか変」は、気のせいやわがままではありません。
それは職場の関係性に潜む小さなサインです。
2万人をみてきた組織開発コンサルタント・勅使川原真衣氏が、違和感を組織に活かす方策を伝えます。
言わなかったのは、よく考えていたから
「こんなことを言ったら、場の空気が悪くなるかもしれない」
そう考えて、飲み込んだ言葉はないでしょうか。
会議で誰かの発言に引っかかった。仕事の進め方に無理があると感じた。上司の判断に、どこか危うさを覚えた。けれど、その場では言わなかった。
なぜならあなたは、よく考える人だからです。
相手の立場を想像する。言い方を選ぶ。今ここで口に出すべきか、一度持ち帰るべきかを考える。
単なる自分の思い込みではないか、何度も確かめようとする。
そうした態度は本来、組織にとって非常に貴重なものです。
ところが現実の職場では、よく考える人ほど損をすることがあります。
沈黙が合意と取られてしまう
理由は単純です。組織には、あまり気を使わずにものを言う人もいるからです。
「それ、意味あります?」
「やりたくないです」
「私は反対です」
こうした言葉を、相手の気持ちを想像する前に出せる人がいます。
もちろん、率直さそのものが悪いわけではありません。問題は、声の大きさや即答の強さが、そのまま「意見の強さ」として扱われてしまうことです。
一方で、よく考える人は沈黙します。あるいは、慎重に言葉を選びすぎて、発言のタイミングを逃します。
すると周囲には「特に異論はなさそうだ」と受け取られてしまう。
本当は見えていたリスクがあった。本当は誰よりも全体のことを考えていた。本当は、そこに大切な違和感があった。
しかし、それが外に出なければ、組織は気づけません。
「言わないこと」を美徳にしすぎていないか
もちろん、そうした人の働きに気づけない組織やリーダーには問題があります。
黙っている人の中にある思考を拾えない会議は、意思決定の質を落としていきます。
ただ同時に、私たち自身も「言わないこと」を美徳にしすぎていないか、一度疑ってみる必要があります。
かつての組織では、空気を読むことや、黙って支えることが評価される場面も多くありました。しかし多様な人が働くいまの職場では、「言わなくてもわかる」はほとんど通用しません。
遠慮深い人もいれば、遠慮しない人もいる。熟考してから話す人もいれば、話しながら考える人もいる。
そういう人たちが同じ場で働く以上、黙っていることが常に成熟した態度だとは限らないのです。
「気づきを小さく外に出す」習慣
では、どうすればいいのか。
大げさな主張をする必要はありません。誰かを論破する必要もありません。
ただ、違和感に気づいたその都度、小さく外に出してみることです。
「まだ言語化しきれていないのですが、少し気になっています」
「この進め方だと、あとで負荷が偏るかもしれません」
「少しだけ確認したい点があるのですが」
この程度でいいのです。
大切なのは、完璧な意見にしてから出そうとしないこと。
よく考える人ほど、発言を完成品にしてから場に出そうとします。しかし職場で必要なのは、完成された正論だけではありません。むしろ、途中の違和感こそが、組織の失敗を防ぐことがあります。
正解を探す会議ではなく、多様な持ち味を、適切なタイミングで活かす交通整理。それができるのは、よく周りが見えているあなたです。
あなたの中にある引っかかりは、わがままではありません。面倒なこだわりでもありません。
それは、まだ誰も言葉にしていない重要なサインかもしれない。
思慮の浅い声に振り回されないために。声の大きい人だけが得をする職場にしないために。
そして何より、自分自身を守るために。
よく考える人こそ、少しずつ言葉にする習慣をつけていきましょう。
忙しいリーダーに、効果のあることだけ
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「好き嫌い」や「やる気」、
「あうんの呼吸」に頼らず
組織を機能させるための具体策!
対話より先に、やるべきことがある。
「大丈夫です」のひとことでモヤッとしたとき、
待ちの姿勢ばかりの部下に自走してもらうにはどうしたらいいのか、
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えるための効果的な伝え方は?……
ビジネスの現場に尽きないコミュニケーションの悩みを、「マネジメント」のスキルとして、「3段階」に分けて打ち手を授けるのが本書です。
まずは土台となる「観察」のスキルを紹介。ここでは、違和感に着目するというユニークな手法をとります。
そして、「自分を知る」「相手を知る」「組み合わせる」の3段階で、関係性から組織の最適解を導き出します。
自分と相手の「持ち味」を知り、
組織をつなぎ直すための一手を
この3段階を経て、違和感を乗り越えるための伝え方や振る舞い方を具体例とともに紹介します。
スキルといっても、難しいものではありません。「あれ、今なんか変だったな」という気づきを、手がかりにつかむこと。
さらに本書では、「持ち味」を知るためのいくつかの診断も掲載。すぐにチームに実装できるような作りにしています。
事前に特別な準備や学習はまったく不要。やるべきことが明確になり、現場のもやもやがクリアになります。
いつでも「今ここ」での気づきから組織を改善できる。行き詰まった状態を打開する新鮮な方策が詰まった、忙しいリーダーの支えになる一冊です。

本書の内容
はじめに
ギリギリな組織の頼みの綱は
人それぞれが「正しさ」を生きている
「持ち味」の組み合わせと「解釈」のクセ
第1章 違和感とは何か? ―― 「決めつけ」が横行する現場で
観察の達人!? コナンくん
仕事に本音はいらない
「なんか変な感じ……」の正体
人はみな「違う色のメガネ」をかけている
「職場のすれ違い」は決めつけから生まれる
とにかくみんな疲れている
すべてのコミュニケーションの基本となる「観察」の3ステップ
第2章 「自分を知る」 ―― 違和感に気づくと「自分」がわかる
自分の本音がわからない
変えられない性質は確かにある
手がかりは「どうしてもとりつくろえない瞬間」
「わかってほしかった」は「解釈のクセ」が生み出している
「自分が知らない自分」はスマホが教えてくれる
第3章 次に、「相手を知る」 ―― 人間関係の違和感から「相性」を知る
「伝える」の前に「見る」がある
「言わなくてもわかるでしょ」はマネジメントの怠慢
相手の何を「見る」のか? ―― ソーシャルスタイルの4類型
「他者の合理性」を知るヒント
「人それぞれ」では話が進まない
第4章 そのうえで、「組み合わせる」 ―― 違和感を役立て最高の組織をつくる
「今いるメンバー」で最高のチームをつくる
「好き嫌い」より「相性」を考える
それは「評価」ではなく「評判」です
「自分でやったほうが早い病」への処方せん
「似た者同士」がうまくいくとは限らない
職場は「ドレッシング状態」にならなくていい
個人と組織のサンドイッチ作戦
第5章 違和感を乗り越えるための話し方・振る舞い方
役割の実行を後押しする「面談」「相談」「雑談」「対話」
「大丈夫です」の複雑さ
「よかれと思って」が残念なワケ
待ちの姿勢ばかりの部下に「自走してほしい」と伝えたい
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えたい
コミュ力が高い人の「真の使命」は、相手に合った手段を選ぶこと
危うい場面で役に立つ「否定しない技術」
会議時間を短縮すれば「生産性」が高まるのか?
「困っている人」は「決めつけていない人」
第6章 「いてくれてありがとね」から始める組織改革
「いい人材がいない」と嘆く人は組織の価値を見落としている
「重すぎない信頼関係」のススメ
「健全に疑う」のススメ
100点を取ってきた子どもに「偉いね」と言ってはいけない理由
100%わかり合うことは無理、それでも「訂正」し合うことはできる
「自分のまま働く」ために
解説 ―― 坂井風太