森七菜さん主演の映画『炎上』が大ヒット中で、サラリーマンでありながらサンダンス映画祭で日本人初のグランプリを受賞した映画監督/脚本家の長久允氏。
その思考法を存分に伝える『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』から、抜粋・再構成し、作品づくりの根幹に迫る。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

脚本の教室『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』

「どこかで見たことあるもの」しか出てこない

 自分なりの表現をしたい。

 いい文章を書きたい。いい企画を立てたい。

 でも、簡単には良いアイデアが浮かばない。

 そんなことはよくあります。

 頭で考えて、「どこかで見たことあるな」という“それっぽいもの”になってしまうなんてことも。

 一人で頭を悩ませて、「自分には何もない」と諦めてしまう前に、とっておきの裏ワザがあります。

SNSに書けない感情は金脈

 電通社員でありながら映画監督として活躍する長久允さんの著書『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』(ダイヤモンド社)にあるこちらの記述。

 皆さんきっとSNSをやっていますよね。たとえば何かを投稿しようとしたときに、書いた文章を自分で推敲することがあるのではないでしょうか。これを言ったら不謹慎で炎上してしまうかもしれないな、とか、これは余計な心配をされすぎちゃうかもしれないな、とか。
 そういう感情こそ、映画は受け止めてくれるのではないかと思うのです。つまり、SNSに書けない感情は金脈。そう思うのです。

 

――『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』p.151-152より

 ちょっとこれはそのまま出せないな、というような、普段感じてしまったちょっとしたもやっとしたこと、黒い感情。

 そういったものも、作品に昇華させれば魅力になると長久さんは言います。

今や、当たり障りのないものは評価されない

 でもなぜ、それが「裏ワザ」とまで言い切れるのか。

 本の中には、こんな記述もあります。

 それはつまり、強い物語であるということでもあるのです。
 また、あなたが人に言えない感情は、きっと同じ経験をした世界のどこかにいる誰かも同じ気持ちかもしれません。もしその人が観たら、強く深く共鳴してくれるでしょう。

 

――『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』p.150より

 個人的な強い感情を呼び起こすものが強い物語である、ということでしょう。

 さらに、これは世界の舞台で映画が評価されたときに伝えられたことでもあるといいます。

 「この映画は他の何にも似ていない」

 それが決め手だったそうです。
 他の何にも似ていないということ。自由な構造とセリフとイメージの積み重ね。それは「それっぽさ」の反対にある場所。

 

――『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』p.38-39より

 日本人で初めてサンダンス映画祭でグランプリを受賞した長久さんの言葉には、説得力があります。

 今や、当たり障りのないものは評価されない。

 それならば、自分の中にある感情を、今一度洗い直してみるのもいいかもしれません。