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「焼肉は高くなった」と感じる人は少なくないだろう。その実感どおり、牛肉価格の高騰や光熱費の上昇で、焼肉店の倒産は過去最多を更新し、業界にはかつてない逆風が吹いている。ところが、その嵐の中で売上も利益も伸ばし、出店を加速させる「人気チェーン店」がある。なぜ、その一社だけが独り勝ちできる理由とは? (イトモス研究所所長 小倉健一)
焼肉店の倒産件数は
過去最高
焼肉が、いつの間にか高い食べ物になっている。
一皿数百円で気軽につつけたカルビが、気づけば1000円を超える。家族で訪れれば、会計の桁がひとつ変わる。かつて「安くて腹いっぱい」の代名詞だった焼肉は、もはや庶民の味方ではなくなりつつある。この実感は、決して気のせいではない。
東京商工リサーチの集計によれば、2026年上半期(1-6月)の焼肉店の倒産(負債1000万円以上)は速報ベースで26件(前年同期8.3%増)に達し、過去最多を更新した。焼肉業界全体が、かつて経験したことのない淘汰(とうた)の波に飲み込まれているのだ。
原因は単純ではない。複数の災厄が同時に襲いかかる「パーフェクト・ストーム」が起きている。パーフェクト・ストーム(完璧な嵐)とは、複数の不利な要因が同時に作用して壊滅的な結果をもたらすことを指す。
世界的な牛肉需要の増加、産地の干ばつ、飼料高騰、そして歴史的な円安。これらが折り重なって輸入牛肉の仕入れ値をはね上げた(メディアなどでは「ミートショック」と呼称されている)。原価の大半を肉が占める焼肉店にとって、これは致命傷に近い。
さらに厄介なのが光熱費だ。各テーブルに無煙ロースターを備え、煙を吸い、空気を入れ替え続ける焼肉店は、特に電気・ガス消費が大きい業態の一つ。食材費と光熱費という「双子のコスト高」が、規模の経済を持たない中小店の体力を容赦なく削っていく。
これによって、消費者の心は冷えてしまっている。値上げそのものより、値上げの「質」が問題だろう。ブランド価値を高めた末の戦略的な高級化ではない。原価を吸収しきれず、追い詰められた末の受動的で強制的な高級化である。
客が払う対価は上がったのに、皿の上の体験はむしろ薄まっている。スタッフを削ったぶん、サービスは落ちた。期待と現実の落差が、確実に客足を遠のかせていく。値上げでしのぐか、身を削って安さで戦うか。明確な答えを出せない店から順に、市場から退場させられているのが倒産の連鎖となっている。
焼肉業界に逆風が吹く中で
店舗網を拡大する「人気チェーン店」
ところが、この嵐のただ中で、まるで日本晴れ、あるいは台風の目の中で出現する好天にいるかのような企業がある。







