それは「焼肉きんぐ」を展開する物語コーポレーションだ。

 同社の2026年6月期第3四半期累計(2025年7月1日~2026年3月31日)の連結決算は、業界の常識を真っ向から否定している。売上高は1121億300万円で前年同期比21.0%増。営業利益は91億2500万円で31.4%増、最終的な純利益にあたる親会社株主帰属の四半期純利益は59億9300万円で、30.5%増を記録した。

 倒産が過去最多を更新し続ける業界とは、とても思えない数字である。しかも、これは一時の勢いではない。通期の会社予想も売上高1471億5900万円(前期比18.7%増)と、増収の歩みを緩める気配すらない。

 グループの総店舗数は914店舗(2026年5月時点)にまで広がり、その中核を担い、成長を牽引(けんいん)してきたのが「焼肉きんぐ」を中心とする焼肉部門だ。1号店がオープンしたのは2007年。長い歴史を持つ焼肉業界では後発もいいところでありながら、いまや業界を代表するブランドへと成長した。

焼肉倒産ラッシュでも独り勝ち!牛角でも安楽亭でもない「人気チェーン店」の名前焼肉きんぐ

 実際、主要焼肉チェーン5社の店舗数推移(2021~25年)を見ると、その差は鮮明だ。日本ソフト販売のデータによれば、2021年以降、牛角が602店から497店へ縮小し、安楽亭や牛繁も減少傾向が続く。

 一方で焼肉きんぐだけは269店から352店へと約3割増加した。主要チェーンの多くが店舗整理を進める中で、焼肉きんぐだけが際立って店舗網を拡大してきたのである。

主要焼肉チェーン5社の店舗数推移

焼肉倒産ラッシュでも独り勝ち!牛角でも安楽亭でもない「人気チェーン店」の名前
出所:日本ソフト販売「焼肉チェーンの店舗数ランキング2022~2025」より作成 拡大画像表示

高品質な肉を
食べ放題で出せる理由

 なぜ、これほどの独り勝ちが可能なのか。安さでもない、肉の質という一点でもない。掘り下げていくと、いくつもの判断が層をなして積み上がっていることに気づく。

 まず、高品質の牛肉だ。業界中がミートショックにあえぐなか、なぜ焼肉きんぐだけは高品質な肉を食べ放題価格で出し続けられるのか。